研究課題
第三年度は第二年度までに得られた知見を基にRNPの生理活性、薬物キャリア、イメージング剤および細胞操作を目的としてアプローチを進めた。1.RNPの設計:第二年度までに利用してきたRNPの特性を基に新たに材料設計を行った。特に経口投与に対する小腸取り込みの最適化を図るため、鎖長および組成の最適化した。2.RIラベル化:上で設計した新材料に対して生体活性とともに動態を高感度で精度良く見積もるために、RIラベル化と動態評価を進め、詳細な検討を行った。3.ナノ治療:これまでに得られた基礎的知見をふまえ、酸化ストレス傷害に対するナノ粒子治療システムの検討を行う。これまで脳、心臓、腎臓虚血再灌流に対するRNPの効果を明らかにし、高い効果を示してきた。また、アルツハイマーモデルのAβアミロイド障害神経細胞実験において酸化ストレスに対するミトコンドリア・アポトーシスへのRNPの影響を検討してきた。本年は活性酸素を消去することにより、抗癌剤の効果に与える影響を検討するとともに、遺伝子発現系の検討も行った。これら細胞および動物実験モデルに対し、定量的な知見を得た。さらに酸化ストレスによる疾患が強く懸念される消化管系の障害(NSAID障害や潰瘍性大腸炎)などのモデル疾患に対する細胞および動物評価を行った。4.表面処理剤:新たに表面コーティング用の材料設計を行い、血液との接触においてROSを消去することにより、血液の活性化と粘着に関する基礎検討を行い、血液適合性表面の新しい展開を行った。
2: おおむね順調に進展している
第三年度は第二年度までに得られた知見を基にRNPの生理活性、薬物キャリア、イメージング剤および細胞操作を目的としてアプローチを進め、(1)経口投与RNPの最適化、(2)RIラベル化と動態評価、(3)抗がん剤アジュバント効果、遺伝子発現とともにNSAIDsの経口デリバリーにも成功した。(4)また、表面処理剤として血液との親和性が高い表面を構築した。このように当初の目標が順調に進展している。
今後は、本研究の目的を達成するために、第三年度までに得られている治験をベースに新たな材料設計、メカニズム解析等を進め、本研究の目的を達成する。(1)新しい抗酸化ストレス材料の設計(1):これまで作成してきたニトロキシド含有ナノ粒子(RNP)にシリカナノ粒子を封じ込めたsiRNPの設計を行う。(2)新しい抗酸化ストレス材料の設計(2):これまでの親疎水型ブロック共重合体によるナノ粒子をさらに展開し、ABA型ブロック共重合体によるナノ粒子の設計を進め、ニトロキシド封入型フラワーミセルの作製を行い、ROS消去型インジェクタブルゲルの設計を行う。(3)腹膜透析液の開発:上記で設計したsiRNPは触媒的に活性酸素を消去するだけでなく、シリカによる不要物の吸着も期待できるため、感染要因となる透析液の交換回数を減らすとともに腹膜硬化症を抑える新しいナノ材料を開発する。(4)創傷治療剤の開発:フラワーミセルの組成を制御し、室温前後でゲル化挙動を観察する。ポリイオンコンプレックスの相転移は極めて鋭敏であるため、創傷治療薬絵の展開を図る。(5)抗酸化ストレスナノ粒子が癌に与える影響の解明:前年度見いだしたRNPの抗がん剤へのアジュバント活性の原因を追究する。特に炎症性転写因子に着目し、検討を進める。
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