研究課題
バイオナノカプセル(BNC)をB型肝炎ウイルス(HBV)のモデルとして、細胞内侵入機構の解明を行った。標的細胞は、ヒト肝癌由来細胞HuH7を中心的に用い、陰性対照としてヒト大腸癌由来細胞WiDrを使用した。また、BNCだけではHBVのモデルとしては不適であるという異見が出ることを想定し、B型肝炎ウイルス陽性者血漿から単離したサブウイルス粒子HBsAgも対照として使用した。実験方法は、蛍光標識したBNCを標的細胞に感作させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞内の動態を確認した。その結果、細胞内移送系阻害剤(CPZ, Filipin等)を併用した解析から、BNCの細胞内移送は、クラスリン依存性エンドサイトーシス及びマクロピノサイトーシスの両方が関与していることが判明した。ただし、標的細胞であるヒト肝癌由来細胞には、カベオリンが存在しないので、ヒト肝臓細胞においてカベオリン依存性エンドサイトーシスが関与するかは依然不明である。また、BNCよりもHBVに近いと考えられるHBsAgについても同様に解析したところ、BNCと同様な動態をしめしたので、BNCはDDSキャリアーの観点から見て、HBsAgと同等であることが判明した。これは、HBV感染機構を搭載したBNCというコンセプトに間違いが無いことを示唆するものである。次に、異なる蛍光色素で標識したアニオン性リポソームとBNCの複合体を形成させ(BNC製剤の基本となる骨格)、2種類の蛍光色素が同様な細胞内動態を示すか現在検討中である。
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