研究課題
2003年,我々はB型肝炎ウイルス(HBV)の表面抗原Lタンパク質からなるバイオナノカプセル(BNC)をヒト肝臓特異的能動的送達用ナノキャリアとして開発した.生体内に投与されたナノ構造体は,肝臓,脾臓,肺などに存在する細網内皮系(RES)に速やかに捕捉される.天然のナノ構造体であるHBVは,血流中に侵入後,RESを回避して,標的臓器である肝臓のみに到達することから,HBVに内在性のRES回避機構が存在すると考えられた.一方、マウスに静注されたBNCはIn vivoイメージングによりRESを回避したので,BNCとHBVは共通のRES回避機構を有すると考えられた.そこで,両粒子表面に存在する重合アルブミン結合領域(PAR)とRES回避能の関係を解析したところ,BNCはPARを介して重合アルブミンを提示することでRES回避した.また、抗癌剤ドキソルビシンを封入したBNC-リポソーム複合体は、PEG修飾したリポソーム(ステルス化リポソーム)と同様に、マウスに静注後も細網内皮系に富む肝臓等に捕捉されにくい。これは、pre-S2領域に含まれる重合ヒトアルブミン受容体により血液中のアルブミンが結合し、ナノ構造体排除の契機となるオプソニン化を抑制するためと考えている。実際、アルブミンによるステルス化機構は報告されており、アルブミン修飾したリポソーム(商品名アブラキサン)は実用化されている。我々の検討では、pre-S2領域に含まれる重合ヒトアルブミン受容体の重合マウスアルブミンに対する親和性は重合ヒトアルブミンの10%程度であり、同受容体をコードする合成ペプチドを提示した直径100 nmのナノ粒子は、マウス体内において細胞内皮系に捕捉されにくかった。今後,ナノキャリアのステルス化にはPAR活性を付与する事が有効であると考えられた.
23年度が最終年度であるため、記入しない。
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