平成25年度は前年度に引き続き予備調査の臨床データの詳細なデータ(呼気皮膚ガス分析,静脈血採決結果,皮膚特性,生活習慣に関するアンケート,心理テスト,臨床診断)の解析を行い,代表的な疾患における生体ガスパターンを検討した.さらに生体ガス成分と各種健康情報との相関関係を検討した.生体ガス診断の基礎となる診断アルゴリズムも検討した.これに基づいた診断プログラムを試作する一方,国立循環器病センター予防検診部コホート調査(吹田スタディ)参加の被験者を対象とした呼気ガス分析を継続した.吹田市住民登録票から無作為抽出された年間検診者(成人)2000名が2年間に一度の検診を受けるシステムとなっており,その中から同意の得られる1000名(年間見込み)を目標例数とし,呼気分析のベースラインデータの収集を開始した.平成25年度末には新規400人のコホート初期断面調査データを集積した.2年ごとに追跡調査を行い,約2/3の追跡データも追加できた.このコホート調査の初期断面調査から仮説「生体ガス中の代表的な低分子化合物により鑑別診断が可能である」ならびに仮説「生体ガススペクトラムにより種々の生活習慣が推定できる」の妥当性を裏付ける結果が得られた.さらに予備データをもとにしたプログラムに毎年得られる臨床データを追加し,累計1700名のガスデータを蓄積し,解析アルゴリズムの修正とプログラム作成のための基礎データの充実をはかることができた.主たる疾患は循環器疾患,消化器・代謝疾患であった.他方,生体ガス分析から生体内活性酸素生成量の推定法を考案した.また,レーザー誘起蛍光法により皮膚ガス中にも活性酸素が存在し,定量的評価が可能であることを実証した.さらに呼気分析の有用性を実証する目的で,肺高血圧症動物モデルを作成し,呼気と生体内各臓器における水素分子,一酸化炭素などの低分子ガス分子の相関,生体内ガス分布も検討した.
|