研究課題
本研究は、競技アスリートの間で蔓延しつつある薬剤あるいは遺伝子によるドーピングを素早く、しかも簡単に検出するための技術およびデバイスを開発することを最終目標としており、その中核となる検出機構を創成するための基盤研究である。この技術が実用化されれば、競技アスリートの薬剤ドーピングあるいは遺伝子ドーピングの検出の他、エリートアスリートのタレント発掘やガンの早期発見などにも応用可能であり、スポーツ生理学発信の研究成果を広く国民に還元できるものと期待している。平成23年度の成果として、薬剤ドーピングに関しては、新たに産業技術総合研究所の栗田僚二博士・丹羽修博士との共同研究をスタートし、ワンチップ型センサーを用いたドーピング薬剤(無機化合物、ステロイド、蛋白質)検出デバイスの開発の手始めとして、単一分子同定型の生体高分子センサーの試作を行った。遺伝子ドーピングに関しては昨年度に引き続き行っていた、プラスミドを用いた遺伝子ドーピングモデル実験系を確立した。ミオスタチンノックダウンの遺伝子ドーピングを行ったマウス個体では、RNA干渉用プラスミド(RNAi)を導入した骨格筋での肥大が確認された。Realtime PCRでこのドーピング用ベクタープラスミド検出を試みたところ、導入した筋および近傍の筋からドーピングしたプラスミドを検出可能であることを示したが、ヌクレアーゼ活性の高い血液サンプルからは検出不可能であった。トップアスリートからのバイオプシーによる筋サンプリングは非現実的であると思われるため、導入した遺伝子を直接検出する方法ではなく、間接的にそのことを裏付けるシステムが必要かと思われた。また、新たなドーピング手法としてレンチウィルスベクターを用いたモデル実験系に着手した。
2: おおむね順調に進展している
薬剤ドーピング検出については、当初考案したカーボンナノチューブもしくはカーボンペーストを利用したデバイスよりも簡便に作成でき、しかも検出結果が安定しているワンチップ型センサーの方が実用性が高いと判断し、その専門家と共同研究を進めることができるようになったのは大きな進展であった。遺伝子ドーピングについては、血液サンプルからの検出を期待していたが、血液からの検出が不可能であることを示せた。この結果は想定内ではあったものの、間接的な検出方法を生み出す大きなモチベーションをもたらした。
薬剤ドーピング検出については、ワンチップ型センサーの応用を考え、新規免疫測定手法の創成とそのデバイス化、特に、血液や尿中に含まれる極微量タンパク・ペプチドを小型装置で測定可能にするワンチップ型バイオセンサー手法の探索を行いたい。遺伝子ドーピングについては、血液からのドーピングプラスミド検出が不可能であることを示せたので、間接的な検出方法を探索レたい。本研究ではバックアッププロジェクトとして進めている筋肥大時のマイクロアレイ解析結果があるので、これを基に、遺伝子ドーピングでかく乱される因子を探索していきたい。
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