研究概要 |
天理市柳本大塚古墳出土木棺の柱状試料(240層前後)と,桜井市茶臼山古墳出土木棺の柱状試料(270層前後)の,炭素14年代法による測定を実施した。先行した研究で,箱根町と長野県遠山川の埋没樹幹の測定結果から日本版較正曲線(J-Cal)の候補が提案されていて,一連の測定結果を国際標準の較正曲線IntCal09とともに比較した。 両試料の最外層は,IntCal09では茶臼山が柳本大塚より33年古くなる一方,J-Calでは11年新しくなった。年輪年代こそ定まらなかったものの両試料は年輪幅の同調が確認され,茶臼山が柳本大塚より6年新しく,J-Calによる結果と整合的であった。これはJ-Calに特徴的な系統的なずれが,畿内の木棺試料についても確認されたことを意味する。 同時期の試料として,年輪年代の定まった糸魚川市姫御前遺跡の埋没樹幹(252層)の炭素14年代測定を実施した。一連の測定結果はやはりJ-Calと整合的で,IntCalからの系統的なずれが日本海側でも確認された。ところが,やはり同時期の試料である韓国東南岸の古村遺跡出土柱根(156層)の測定結果はむしろIntCalに近く,J-Calに近づく時期は限定的であった。当時の大気中14C濃度の変動が,日本列島と韓半島との間で異なっていた可能性を示唆する結果となった。
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