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2011 年度 実績報告書

日本産樹木年輪による炭素14年代の高精度較正曲線の作成

研究課題

研究課題/領域番号 21240072
研究機関国立歴史民俗博物館

研究代表者

坂本 稔  国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (60270401)

研究分担者 光谷 拓実  奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (90099961)
キーワード炭素14年代 / 年輪年代 / 較正年代 / AMS / δ^<18>O値 / 地域効果
研究概要

名古屋大学大学院の中塚武教授に研究協力を仰ぎ,樹木年輪中のセルロースに含まれる酸素の安定同位体比から,木棺柱状試料の年代決定を行った。樹木年輪セルロースのδ^<18>O値は生育環境の湿度に応答し,樹種によらず比較的広い地域間で変動パターンが同調することが明らかになりつつある。まず年輪年代の確定したヒノキ材(飯田市畑ノ沢地区埋没樹幹)から得たセルロースのδ^<18>O値測定を行い,1年ずつの変動パターンを得た。次いで柳本大塚古墳出土木棺の柱状試料から得たセルロースのδ^<18>O値測定を行い,その変動パターンがヒノキ材と同調することを確認した上で年輪年代を確定させた。桜井茶臼山古墳出土木棺の柱状試料は年輪幅の変動パターンが柳本大塚古墳出土木棺の試料と同調していたことから,同じく年輪年代を確定させることができた。
昨年度日本列島と韓半島南部とで較正曲線の地域差が確認されたが,これが地域差であるか樹種(コウヤマキ,ノグルミ)の違いであるかを確認する必要がある。今年度,京都府の北白川追分町遺跡で出土したコナラ節の埋没樹幹の炭素14年代を測定したところ,前6~7世紀の較正曲線IntCalと良好な一致を見せた。
中国側山麓で得られた白頭山火砕流の埋没樹幹(チョウセンマツ)の炭素14年代測定では,想定されるBT-m噴火年代に基づいて較正曲線と比較した結果,やはりInt Calからの乖離が認められた。その傾向は較正曲線が平坦ないし右上がりになる,すなわち大気中の炭素14濃度が減少する時期に顕著であり,右下がり,すなわち大気中の炭素14濃度が増加に転じている時期はInt Calに沿ったものになった。これは日本産樹木や,厳密には韓半島南部の古村遺跡出土木柱にもみられる傾向である。較正曲線の微細構造を検討するためにも,酸素同位体による年輪年代法が有用と考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

年輪年代の確定した樹木年輪試料の確保が困難で,結果的に新たな試料を測定することはできなかった。今年度は昨年測定できなかった残りの年輪試料の追加測定,およびδ^<18>O値による同試料の年代決定などの成果はあったが,較正曲線整備のために樹木年輪試料の追加が必要である。

今後の研究の推進方策

・引き続き年輪年代の確定した樹木年輪試料の確保に努める。その際はδ^<18>O値による年輪年代も利用する。
・新たな試料を確保できなかった場合,10年前に測定されたものの当時は十分な精度でなかった樹木年輪試料(AD330~630)の再測定を高精度で行う。また,日本列島内における較正曲線の地域差を確認するために,1世紀台の樹木年輪試料を複数測定する。
・これまでの成果を,7月に開催される放射性炭素国際会議で報告した上で集約する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2011

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] Regional effects of atmospheric ^<14>C appeared in East-Asian tree rings2011

    • 著者名/発表者名
      M.Sakamoto
    • 学会等名
      第4回東アジアAMSシンポジウム
    • 発表場所
      東京大学(文京区)
    • 年月日
      20111216-20111218
  • [学会発表] Comments on "^<14>C Wiggle-Matching of the B-Tm Tephra, Baitoushan Volcano" (Yatsuzuka S.et al., 2010. Radiocarbon 52 : 933-940)2011

    • 著者名/発表者名
      M.Sakamoto
    • 学会等名
      2011年度質量分析学会同位体比部会研究会
    • 発表場所
      海雲台グランドホテル(韓国・釜山)
    • 年月日
      20111123-20111125
  • [学会発表] 紀元前後の東アジア産樹木年輪の示す炭素14年代の変動2011

    • 著者名/発表者名
      坂本稔
    • 学会等名
      日本文化財第26回大会
    • 発表場所
      筑波大学(つくば市)
    • 年月日
      20110611-20110612
  • [学会発表] Radiocarbon dating of archaeological remains from Gochon site, Busan, Korea2011

    • 著者名/発表者名
      M.Sakamoto, HS.Kim, M.Nagashima, SY.Min
    • 学会等名
      "Radiocarbon and Archaeology" 6th International Symposium
    • 発表場所
      Palia Ilektriki Cultural Center(キプロス・パフォス)
    • 年月日
      20110410-20110415

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公開日: 2013-06-26  

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