研究課題/領域番号 |
21240073
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
高妻 洋成 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 保存修復科学研究室長 (80234699)
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研究分担者 |
降幡 順子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (60372182)
脇谷 草一郎 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (80416411)
福永 香 独立行政法人情報通信研究機構, 社会還元促進部門・技術移転推進室, マネージャ (20358956)
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キーワード | ミリ波 / テラヘルツ波 / イメージング / 非破壊診断技術 / 非接触診断技術 / 断層画像 / 文化財資料 / 分光スペクトル |
研究概要 |
テラヘルツ波とミリ波を利用した新たな分析調査技術を文化財の調査・研究・保存に応用するための開発研究をおこなった。平成23年度におこなった研究の実績は以下の通りである。 1)現有のミリ波イメージング装置は反射率の高い試料を測定した場合、信号量が飽和してしまい、イメージングにおいて画像化ができないという欠点があった。ミリ波の出力レベルを調整することにより、この欠点の改良をおこなった。 2)高松塚古墳やキトラ古墳の壁画が描かれている漆喰は、〓の分解消失や主成分である炭酸カルシウムの溶脱により多孔質化しており、漆喰層の崩落などが懸念される。漆喰層内部の状態はX線、赤外線あるいは紫外線を用いた従来の観察手法では非破壊的に知ることはできないのに対し、電波のようにある程度物体内部に侵入できるテラヘルツ波は漆喰層の状態を断層画像として得ることができるものと期待される。そこで、テラヘルツ分光イメージングで画像化できる孔隙サイズなどの基礎データを得るため、人工的に多孔質化させた漆喰試料を調製し、テラヘルツ分光イメージング測定をおこなった。孔隙サイズの違いにより、得られる画像が異なり、孔隙サイズが300μm以上では多孔性を画像化することが困難となることが明らかとなった。 3)談山神社には嘉永の大修理の際に作られたとされる彩色塗装の手板が保存されている。この塗装手板は本殿を彩色する際に作製されたと考えられており、現在の本殿彩色の劣化を検討するうえで重要なものである。本年度は蛍光X線元素分析とあわせて、テラヘルツ分光イメージングによる調査を実施した。その結果、金による線描がある程度の広さの金箔を貼りこんだ上に彩色を施して金を線状に残す技法がとられていることが明らかとなった。 以上より、文化財、特に障壁画などの塗装構造の解明および劣化状態のイメージングにミリ波およびテラヘルツ波を応用できることを明らかにすることができたということができる。
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