研究概要 |
(1)湖沼での底質コアサンプルの採取、各種トレーサー濃度鉛直分布測定とその解析 琵琶湖(北湖2地点)、猪苗代湖(湖心)で40-50cm程度の不撹乱底泥コアサンプルを2本ずつ採取し、1cm間隔で分割し、物性、栄養塩や色素濃度などの鉛直分布を測定した。また、霞ヶ浦、琵琶湖中の各種藻類変化(綱レベル)に関するデータベースと底質中の色素濃度から推定される藻類変化を比較した。両者に相関が見られることから、底質情報をもとに過去の藻類繁茂状況を推定することが可能なことを示すとともに、両者の関係から色素の底質中での分解速度を求め、それを用いることで過去の藻類情報を定量的に推定することが可能となった。一方、霞ヶ浦におけるケイ素濃度上昇に関して、懸濁物や底質からの溶出実験、巻き上げ現象を考慮した溶出シミュレーション、底質ケイ素濃度鉛直分布との関係解析、珪藻繁茂への影響評価などを行った。また、中国四川省塩丁地区の湖沼の堆積物を採取し,Cs-137,Pb-210exの採取を行った。また,発生起源においても採取を行い,土地利用の変化によって,湖沼への流出土砂の起源が変化してきたことが明らかになった。さらに、湖底質の硫黄同位体比分析を行うため、従来は低濃度の硫黄の濃縮が必要であったが、不完全燃焼を防ぐための助燃剤となる試薬を検討した結果、完全燃焼が可能となり、濃縮なしでも高精度の同位体比分析ができるようになった。 (2)流域,湖沼内での水,物質の流下経路,水質形成機構に関する調査,分析 霞ヶ浦流域源流の筑波山を対象に、マルチ・トレーサー手法、数値モデル手法を併用し、湧水・地下水の平均滞留時間が数年から40年程度であること、筑波山体の水貯留量が霞ヶ浦におけるそれの約半分程度であることを明らかにした。
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