研究課題
これまでに単層カーボンナノホーンと銅系細孔性高分子金属錯体でのみ、水素と重水素吸着特性における明瞭な実験結果が得られていたので、純度の高い2種類の単層カーボンナノチューブ(レーザーアブレーション法による試料(LA-SWCNTとスーパーグロース法による試料(SG-SWCNT))について、厳密にナノ細孔構造をキャラクタライズし、量子分子篩効果を実験と量子シミュレーションにより研究した。LA-SWCNTは規則的バンドル構造を形成し、SG-SWCNTはバンドルを形成せず、ほぼ単独のナノチューブであることを、透過電子顕微鏡、X線回折、分子吸着法から明らかにした。40Kから77Kにおける低温吸着測定から、いずれのSWCNTにおいても、重水素の吸着量が水素の吸着量を上回り、低温ほど吸着量の差が大きくなることを明らかにした。その結果はファインマン・ヒブス量子ポテンシャルを用いる量子分子シミュレーションで説明された。これらの結果は物理の学術誌に招待論文として発表された。ここで特に重要なことは、SG-SWCNTは開口処理をしないとナノチューブの外表面しかないにもかかわらず、明確な量子分子篩効果を示したことである。つまり、外表面の分子・表面相互作用ポテンシャル井戸が篩作用を示している訳であり、物質の壁からなる極微細孔でなくても、篩作用が生ずることが発見されたことは意義深い。CH_4とCD_4のメタン同位体についても、メタンの沸点において1nmの細孔径を有する活性炭素繊維について、量子分子篩効果が認められるかを検討した。その結果、ナノ細孔が比較的充填してくるとCD_4の吸着量がCH_4より、1%程大きくなることが分かった。これは量子分子篩効果が水素あるいは重水素に限られているわけではないことを示す重要な発見である。しかし、既存吸着装置の温度制御系で大きなトラブルが発生し、同位体置換反応を研究できるように、既存低温吸着装置を改良し、100K以上の温度での吸着と質量分析を可能とする装置の立ち上げは終了しなかった。
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