研究課題/領域番号 |
21241027
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 紀明 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (50252416)
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研究分担者 |
白木 將 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (80342799)
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キーワード | 表面・界面 / スピン / 非弾性トンネル分光 / 磁気異方性 / 鉄フタロシアニン / 吸着 |
研究概要 |
金属基板に展開した鉄(II)フタロシアニン(FePc)分子のスピン状態および磁気異方性をSTM非弾性電子トンネル分光(IETS)およびX線吸収分光(XAS)を使い調べた。Cu(110)(2x1)-O表面では、バルク試料と同様のスピンS=1が保持されているが、Cu(110)やAg(110)に直接結合した分子ではスピン分極が消失し、S=0に変化することがわかった。また、Au(111)表面では、近藤状態の形成を示す特徴的なスペクトルが得られ、このことからS=1からS=1/2に変化したことがわかった。基板との間の電荷移動によりS=1を与える3d準位の縮退が解け、S=1/2となったことが示唆される。また、Ag(110)上に成長した第2層目のFePc分子は、S=1特有のIETSスペクトルを示した。これらの結果は、基板と分子との相互作用を反映して、分子のスピン状態が様々な値をとりうることを示している。分子と基板との相互作用が強い場合は、電荷のやり取りと化学結合形成によりS=0となり、相互作用が弱い場合は、バルクと同様のS=1状態が保持される傾向がある。その中間として、Au(111)は、その中間に位置していると解釈ができる。分子/基板界面の相互作用をチューニングすることでスピン状態が制御できることを示している。Cu(110)(2x1)-O表面に吸着したFePcとAg(110)の上に成長した2層目のFePc分子について、磁気異方性を調べた。二つの面では分子と基板との相互作用が弱くスピン状態はS=1が保持されている。ところが、磁気異方性は、Cu(110)(2x1)-O表面では分子面に垂直、Ag(110)上では分子面内と異なる結果が得られた。バルクでは、分子面内異方性を示すことから、Cu(110)(2x1)-O表面では、吸着により磁気異方性が面内から面直にスイッチしたことがわかる。
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