研究課題
Ag(110)基板に吸着した鉄フタロシアニン分子について、放射光X線吸収分光(XAS)および円二色性(XMCD)により1層目および2層目の磁性を測定した。特に、2層目については1層目の上に一次元的な列構造をつくることから、面内における磁気異方性について注目して実験をおこなった。2009年度にも、同様の実験を行ったが、吸着量の決定に誤差が大きかったので再度計測を行い、2009年度の結果と比較検討を行った。1層目の分子については、スピンが消失いることが確認された。2層目では、分子の持っているもともとのスピンが生き残っており、面内磁気異方性を持つことがわかった。[11bar0]と[001]方向についてXMCD郷土の差を詳細に検討したが、有意の差は観測されなかった。今後、STM-IETSスペクトルの水平磁場依存性や他の方向でのXMCD測定を行い、構造との相関を検討する必要があることがわかった。Au(111)表面における鉄フタロシアニンについて、Fe2pの内殻光電子分光スペクトルの吸着量依存性を詳細に検討した。2層目分子のスピン状態はS=1であることを基準に、吸着量を増やしたときのスペクトルの変化を解析した。1層目が完成するよりも低い吸着量においても、2層目と同様のスペクトルが得られ、吸着量に応じたスペクトル変化はない。このことから、金表面と直接相互作用している分子についてもS=1スピン状態が保存されていることが示唆された。この表面では、鉄のスピンと基板の伝導電子により近藤共鳴状態が形成されるが、S=1のスピンの場合、どのような起源で鉄のスピンがスクリーンされるか理論的な検証の必要があることが分かった。鉄のスピンを操作するために、鉄原子にCOやNO分子を配位させる実験を行った。CO配位では近藤状態が消失すること、NO配位では近藤電子雲やスペクトル形状が大きく変わることを見出した。
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