研究課題
我々はSV40の主要外殻タンパク質であるVP1五量体の自己集合化によるナノカプセル形成の解析を通し、裸のプラスミドDNAがカプセル形成を誘導し、DNAを内包したナノカプセルが形成される事を見いだした。このDNA内包ナノカプセルをサル腎臓細胞由来株COS-1細胞へ感染すると、遺伝子発現がルシフェラーゼ活性により確認された。しかし、この場合ルシフェラーゼ陽性細胞数が極めて少ない。そこで、SV40感染性ウイルス構造を基に裸のプラスミドDNAのクロマチン化を試みた。まず塩透析法でクロマチンを作製した。次にそれがVP1五量体のナノカプセル(粒径約45nm)形成を誘導し、さらにクロマチンがカプセル中に内包されることが確認された。これを用いて宿主細胞への感染実験を行うと、これまでの裸のプラスミドDNAを内包したナノカプセルよりも、数倍高い発現量が確認された。今後の展開としては、非主要外殻タンパク質であるVP2/3を加えて、ウイルス粒子になるべく近い構造体の形成を目指す。次に、ナノカプセルの細胞・組織指向性付与の為に、カプセル表面を遺伝子工学的手法や化学的手法により改変する技術を確立した。ナノカプセル表面に位置するVP1の136番目のヒスチジン、138番目のアスパラギン、273番目のスレオニンをそれぞれシステインに置換したH136C、N138C、T273C変異体を作製した。これらの改変システイン残基は、マレイミド基を持つ架橋剤の標的として目的物質の固定化に利用できる。そこで、1個の28nmフェライト粒子を被覆した変異VP1ナノカプセルの表面に架橋剤を介してEGFを固定化したものは、培養細胞レベルでEGFR高発現がん細胞へフェライトが選択的に導入されることを確認した。さらに、個体レベルでEGFR高発現と低発現のがん細胞を両方持つ担癌マウスに静注するとEGFR高発現がん細胞に選択的にフェライトが集積することがMRI造影によって確認された。以上のことから、ナノカプセルに細胞指向性を付与する技術基盤が確立できた。
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