研究概要 |
ナノスケール層間を有する層状材料は有機や無機材料において多くの種類が存在し、バルク状態においても内部の電気伝導は2次元的であるとされている。その多くはゲートを作製して電界を印加しても電気伝導が変化することは無いが、グラファイトから剥離したグラフェン原子薄膜はゲート電界変調も顕著であり、電荷移動度が200,000cm^2/Vs以上と報告されている。現行のシリコントランジスタ(約1,000cm^2/Vs)と比較して驚異的に大きな値であり、基礎物性に対する研究だけでなく、次世代スイッチング素子のチャネル材料として期待され、早急な特性解明が望まれている。しかし、グラフェンは本質的にバンドギャップが存在しないために、ゲート電界の変化に対して電流変調は起こるものの、スイッチングデバイスに必須の電流OFF状態は作りえない。我々は、このグラフェンに電界を印可してバンドを制御してOFF状態を創り出すことに取り組んでいる。H22年度においては、このグラフェンのバンドギャップの有無が、グラフェントランジスタを組み合わせたロジック素子の動作に及ぼす効果を詳細に調べた。バンドギャップの有無は、バンドギャップを原理的に組み込めない単層グラフェンと、電界でバンドギャップがひらく2層グラフェンにて比較した。それぞれに基礎ロジックであるインバータとしての動作が可能であり、我々の独自のゲート構造によって大きな電圧利得を得ることに成功した。さらに、バンドギャップは動作電圧1V以下での動作安定性を劇的に向上させることを見出した。現在、さらに詳細を調べている。
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