グラフェンは、ディラック電子系に起因した高い伝導性が理論的な研究によって見出され、実際に他の材料を大きく凌駕する特性が報告されるようになってきた。この伝導性を基に、次世代半導体素子のチャネル材料、IC内の配線材料、透明電極材料などとしての応用可能性が期待されている。原理的には擦り付けた鉛筆筆跡にもグラフェンが含まれているとの紹介に触発され、ありふれた身近な材料に未発見材料が隠れていた驚きが注目度を更に高めている。その一方で、グラフェンの持つ基本特性の正確な材料情報が求められており、基礎知見の検証が強く求められている。この基礎知見なくして、グラフェンの応用展開の絞り込みは難しい。 このため、本研究ではグラフェンを用いた次世代エレクトロニクスを実現するため、エレクトロニクス材料として必要とされるグラフェンの基礎電気伝導特性の解明を行った。グラフェン素子を作るための電界効果変調を制御するために、グラフェンにアルミニウムを直接蒸着して空気に曝すことで、グラフェンとアルミニウム界面に自己形成酸化絶縁膜ができることを見出した。この自己形成絶縁膜は、常にナノメートル厚となるため、効率的に電界効果素子を造れ、効率的に大きな電界をグラフェン素子に印加することが可能となった。2層グラフェンに電界を印加して、バンドギャップを自在に制御して半導体的な伝導を実現できるようになった。さらに、半導体的特性を用いて、電界効果トンネル素子やロジック動作のための基礎素子を実現し、伝導を実証した。
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