研究課題/領域番号 |
21241044
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川瀬 博 京都大学, 防災研究所, 教授 (30311856)
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研究分担者 |
釜江 克宏 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (50161196)
岩田 知孝 京都大学, 防災研究所, 教授 (80211762)
山中 浩明 東京工業大学, 総合理工学研究科, 教授 (00212291)
佐藤 智美 清水建設株式会社技術研究所, 原子力施設技術センター, 主任研究員 (00393562)
高井 伸雄 北海道大学, 工学研究科, 准教授 (10281792)
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キーワード | 予測強振動 / 想定震源断層 / 被災リスク / 建物ストック / 建物被害 / シナリオ地震 / 被害予測 / 発生確率 |
研究概要 |
本研究では構造物の耐震設計および防災計画策定に活用できる全国主要都市を対象とした予測強震動と発災リスクを評価することを目的としている。主な研究課題としては、代表的な都市域に対して、想定震源断層を系統的な考え方で設定し「想定震源データベース」を作成すること、その情報を用いて、同一プログラムによる一斉強震動予測を実施し「予測強震動データベース」を作成すること、その予測強震動を一般構造物や超高層建物などの非線形時刻歴応答解析モデルに入力し、各都市の建物被災リスクを評価すること、および、現行の強震動予測のスキームにおいて結果を変動させる各種要因に対し詳細な検討を加え予測を高度化すること、を目指して研究している。 今年度は、昨年3月に発生した東北地方太平洋沖地震の大量の情報を有効に活用して、これまで不十分だった強大入力の際の非線形サイト特性の評価および大マグニチュードの地震の強震動生成特性のモデル化について検討を重ねた。まず、震度が7を超えた唯一の観測点であるK-NET築館と液状化の発生が広範囲に見られ被害も大きかったK-NET古川とその周辺において微動観測および余震観測を行い、そのサイト特性と地盤構造を同定する解析を行った。その結果、K-NET築館については表層2mまでの軟弱な地層が大きな寄与を果たしていることを明らかにした。さらに、札幌都市域の深部地盤構造モデルに関して、2003年十勝沖地震、2011年東北地方太平洋沖地震のデータを用いて定性的にではあるが詳細に議論するとともに、2010年石狩地方中部地震において特定の測線に関して定量的な検討を行った。また、統計的グリーン関数法の要素地震の検討のため、中小相似地震の実記録からスペクトルの安定性を検討した。また、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の震源像について、近地強震記録を用いた断層破壊モデルの推定と強震動生成の観点からの震源モデルを構築し、比較した。その結果、強震動生成領域は沿岸の深いところに多くが存在し、高ストレスドロップの特性を示していることを明らかにした。そして、その特徴の一部にもとづき、南海トラフのプレート境界地震に関しこれまで想定されていた以上に大きい想定震源モデルを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東北地方太平洋沖地震の影響で強震動予測のスキームを見直し、高度化を図っているため、予測強震動データベースの作成はやや遅れているが、24年度の作業で実施し提供できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
早急に東北地方太平洋沖地震の観測データから得られた最新の知見を反映させつつ、強震動予測および被害予測のスキームを高度化し、それを踏まえた新しいパラダイムによる予測強震動と予測被害のデータを整備したい。当初計画では予測震源として内陸地震およびスラブ内地震も含んでいたが、現在の状況を踏まえ、限られた資源を集中的に海溝型プレート境界地震に投資することとしたい。
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