研究課題/領域番号 |
21241045
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤吉 康志 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (40142749)
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研究分担者 |
三寺 史夫 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20360943)
川島 正行 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (10281833)
山口 一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20166622)
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キーワード | オホーツク海 / 海氷 / 宗谷暖流 / ドップラーレーダ / 帯状雲 |
研究概要 |
今年度は、オホーツク海沿岸に設置した2台のドップラーレーダを用いて、海氷の短時間変動の観測に成功した。海氷接近時には、海氷野上での風速の鉛直分布観測を、海上保安庁の巡視船「そうや」に同乗して行った。このデータは、海氷の流動計算を行うための重要なパラメーターとして用いられる。また、レーダデータを解析することで、海岸に沿って発生する帯状の雪雲の成因と立体構造を明らかにした。また、領域大気静水圧モデルを用いたシミュレーション結果から、大雪山系を迂回する風の場の変形が、この帯状雲の形成に重要であることが明らかとなった。さらに、オホーツク海沿岸を流れる、宗谷暖流とその外側域に存在する冷水帯形成のメカニズムを、地形に対する流れの非線形共鳴の観点から理論的に解明した。すなわち、宗谷暖流が浅い宗谷海峡を乗り越えるときにサハリン島の南端で内部ケルビン波を励起し、そのため下層の冷たい海水が表面まで湧昇する。その湧昇が宗谷暖流の渦位勾配を導波管とする波として下流に伝搬することで、暖流に沿った冷水帯が形成されることが分かった。 氷盤衝突時の運動量保存則に基づく離散的な海氷モデルにより、北海道近海の高解像度(2km格子)海氷変動計算を行った。一週間予測計算による海氷分布を人工衛星による観測データと比較し、その精度を吟味した。その結果、北海道沿岸域では良い精度で海氷変動を予測できる事が判った。これには、宗谷暖流の再現精度向上が大きく影響している。一方、サハリン島南端のアニア湾の海氷変動予測にはまだ有意な誤差が見られる。しかしながらアニア湾においても海氷変化の方向は正しく捉えており、次年度で実施するデータ同化等の改善技術を取り入れれば、実用的な精度での予測が可能になると考えられる。
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