研究課題/領域番号 |
21241046
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 邦史 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90211789)
|
研究分担者 |
山田 貴富 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (30451850)
|
キーワード | クロマチン / エピゲノム / ノンコーディングRNA / ヒストン修飾 / 転写 / ストレス応答 / グルコース代謝 |
研究概要 |
分裂酵母のストレス応答遺伝子上流の遺伝子間領域や、減数分裂期組換えホットスポットに見出されるM26/CRE配列周辺から、mRNA型のタンパク質に翻訳されない長鎖RNA(mlonRNA)が合成されている。たとえば、この配列を有するfbp1^+遺伝子上流の遺伝子間領域では、グルコース飢餓時にmlonRNAの転写が生じるとともに、多段階のクロマチン再編成が誘発され、fbp1^+遺伝子の大規模な活性化に至る。これは、mlonRNAのカスケード転写とそれによってもたらされるクロマチン再編成により、fbp1^+遺伝子プロモーター周辺への転写活性化因子が促進されるからであると考えられている(廣田ら、Nature, 2008)。本研究ではmlonRNAの普遍性を網羅的転写物解析により検証するほか、クロマチン構造・エピゲノム修飾などとの関係、RNAとしての安定性の制御機構を解析する。 本年度は、昨年度に見出したfbp1^+遺伝子上硫領域のヒストン修飾(ヒストンH3K9のアセチル化)について、ヒストンアセチル化酵素Gcn5、ヒストンメチル化酵素Setl、ATP依存型クロマチン再編成因子Snf22などの変異体を用いて、前年度に明らかになったヒストン修飾パターンへの影響を解析し、fbp1上流域でのアセチル化におけるGcn5の役割と、転写活性化における機能、またSet1変異体でヒストンH3K4のメチル化が完全に消失することを明らかにした。次世代シーケンサーを用いて昨年度明らかにしたfbp1^+遺伝子領域のアンチセンスRNAやmlonRNAの分解過程の解析を引き続き実施し、その全容がほぼ明らかになった。また、mlonRNAにmRNA同様にキャップ構造が付加され、細胞質中のポリソームに移行することを実験的に示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定された実験はほぼ全て行った。一部アンチセンスRNA合成に関する興味深い研究成果が得られつつあるため、この実験に資源を集中している。そのため、RNA分解系の変異体を用いたRNASeqと動物細胞に関する計画は来年度以降に繰り延べた。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的に予定された実験を行う要諦である。特に、今年度はこれまでの成果を論文に発表する予定であり、そのための実験を多く行う。また、RNA分解系の変異体を用いたRNASeqや動物細胞を用いた実験リボソーム上のmlonRNAの局在を調べる実験に着手する予定である。
|