本研究は、金銅製の半跏思惟像およびその関連作品について、蛍光X線分析、X線透視撮影、内視鏡およびマイクロスコープによる撮影、3次元計測といった光学的調査に基づいて各々の制作地の比定を試み、新たな研究基盤を築くことを目指す日韓共同研究である。 本年度(平成22年度および平成23年度繰越分を含む)は、韓国においては国立中央博物館、同慶州博物館、同大邸博物館、中国においては上海博物館、浙江省博物館、蕭山博物館、ベトナムにおいてはホーチミン歴史博物館、アンザン省博物館、また日本国内においては東京国立博物館、東京芸術大学、香川・六萬寺において半跏思惟像を含む金銅仏の調査を行った。なかでも国立中央博物館において国宝83号の調査が実施できたことは特筆される。これらの調査の過程で、これまで金銅仏の鋳造時に生じる鬆は中国および韓半島の作例に多く、鬆の有無が日本製か否かを判別する有力な根拠とされてきたが、そうではないことが判明した。また、調査を通じて、これまでは金銅仏の細部の細工について、基本的に豊による仕上げとみられてきたが、特に中国、韓半島の作例では、型の段階、すなわち鋳造によるものが多いことが確かめられた。このように、金銅仏の技法については、抜本的に見直していく必要があることを痛感した。 なお、これらの調査結果:の一部については、中間報告書を作成して公表し、あわせて今後の調査への参考、最終的な報告への準備作業とした。
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