研究分担者 |
定藤 規弘 自然科学研究機構生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 教授 (00273003)
吉田 晴世 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (40210710)
原田 康也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80189711)
田邊 宏樹 自然科学研究機構生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (20414021)
林 良子 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (20347785)
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研究概要 |
本年度は、基礎研究データ等を踏まえ,語彙処理のさらなる調査および言語理解,言語産出の各側面について、主として心理言語学的行動実験を行い,言語処理の自動化プロセスの一端を明らかにした。 〈課題I〉日本人英語学習者を対象に,文レベルにおける統語処理・意味処理に焦点をあて文理解の自動化プロセスの解明を目的として,心理言語学的行動実験を行った。(a)日本人英語学習者の動詞の下位範疇化情報の利用について,意味性判断課題を用いた心理言語学実験によって検討した。その結果,上級学習者はメンタル・レキシコンに母語話者と同様の語彙情報を持っているが、効率的に利用することができない,また初級学習者においては語彙表象が不十分かつ文理解プロセスに利用できないことが示された。(b)特定の統語構造への反復接触が日本人英語学習者の文理解に与える影響を検証した。その結果、記憶保持と語順操作を伴った特定の統語構造の反復が統語解析を促進し,その効果の程度は下位範疇化情報の違いによって差があることが明らかにされた。 〈課題II〉日本人英語学習者を対象に,文産出における統語情報の役割に焦点をあて,文産出の自動化プロセスの解明を目的として心理言語学実験を行った。(a)プライム文は音声・文字の同時提示によってターゲット文のモダリティの影響を検討した。その結果,L1英語話者では音声のほうが文字より有意に高いプライミング効果が見られたが,日本人英語学習者ではモダリティ間に有意な差は見られなかった。また,下位群のプライミング効果は他の熟達度グループより有意に低かったが,その理由として,メンタル・レキシコン内に文産出のための語彙・統語表象が十分形成されていないことによると推察される。(b)統語処理能力を伸ばすと思われるトレーニングによりプライミング効果に差異が生じるかどうか調査した。熟達度が比較的低い大学生4クラスを上・下位群および実験・統制群に分け,統語処理能力を伸ばすと考えられる統語構造トレーニング(語句整序問題)を授業中に行い(全9回),事前・事後テストに文産出課題を用いてプライミング効果を比較した。その結果,下位実験群では事前・事後テスト間に有意な伸びが見られ,熟達度の低い学習者ほどトレーニングによって統語構造に敏感(sensitive)になる可能性が示唆された。
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