研究課題/領域番号 |
21242015
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安冨 歩 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20239768)
|
研究分担者 |
深尾 葉子 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (20193815)
脇田 晴子 城西国際大学, 人文学部, 教授 (80088012)
長崎 暢子 龍谷大学, 人間科学宗教センター, 研究員 (70012979)
中村 尚司 龍谷大学, 人類科学宗教総合研究センター, 研究フェロー (50172424)
生田 美智子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (40304068)
|
キーワード | 非線形 / 創発 / 価値 / スピノザ / 調和 / 親鸞 / 見えざる手 |
研究概要 |
本年度は、以下の点で本質的な発展があった。第一に、ホイヘンスの振り子の同期実験を、その友人であるスピノザが知っており、それが『エチカ』の思想に本質的影響を与えた可能性の高いことを発見した。これにより、デカルト/ニュートンの「線形の道」に対する、スピノザ/ホイヘンスの「非線形の道」が、人類に対して17世紀に開かれていたことを示した。現代の諸問題を超克するためには、後者の道を辿ることが不可欠だと考えられる。前者は差異を否定した「共通」に基盤を求めるのに対して、後者は差異に基づく「調和」に依拠する。第二に、創発が価値を産む、という観点から経済学を根本的に問い直すことで、現実を理解する上で役立つ経済理論を構築しうることが判明した。この経済学は、ピーター・ドラッカーの経営学となめらかに接続しうるので、経済学と経営学とを有機的に統合することにもなっている。以上、2点を中心として、代表者が『経済学の船出~創発の海へ』という書物を刊行した。第三に、スミスの「見えざる手」の概念を再検討し、それが「安全」を志向するものであり、"Feldstein-Horioka Paradox"を『国富論』の中で既に指摘していることを明らかにした。更に、親鸞がスピノザに数百年先んじて、同様の思想を展開していたことに気づいた。それは仏教の縁起と他力という観点から世界と人間とを考える視点を与える。これは、近代の諸問題を乗り越える上で、決定的な意味を持つと考える。このことから「親鸞ルネサンス」という他力思想に基づいた学問の樹立を構想した。
|