研究課題
(1) 中国の戦国時代から晋代までの簡腹が出土している唯一の地域である湖南省長沙で、簡牘の調査と学術交流を行った。訪問機関は、長沙簡牘博物館・岳麓書院など六ヶ所である。秦から晋に至る簡牘の調査のみならず、いわゆる「対書傭」をあらゆる角度から観察した。また保存上の問題から見ることが難しい帛書を実見する貴重な機会も得た。こうした調査に加え、保存科学の専門家や歴史研究者との意見交換を行った結果、簡牘は形態・文字の種類や大きさ・書き方などに時代的特徴があり、時代による変化を一層意識すべきであること、「対書傭」は役人の日常的業務の姿とみてよいか、改めて検討が必要であること、また日本の木簡の保存方法にも再検討の余地があること、帛書のたたみ方や副葬のし方についての疑問点など、多くの知見と課題を得た。(2) 全体研究会を3回を行なった(内1回は新潟出土簡牘の調査を兼ねた)。テーマは、韓国木簡と日・中の簡牘との比較研究・多機能木簡の検討・マザールトクラク簡からの日本木簡検討などであった。いずれも各国の木簡学からの脱却という目標を明確に意識した発表内容で、特に具体的な脱却方法をみすえた検討内容であった。なかでも機能の点からどのようにアプローチするかが議論された。(3) 南北朝時代の専門家を招いての小研究会を3回開いた。特に近年出土の晋代の木簡を中心に議論した結果、秦漢時代との時代による差異の意義、さらに日本木簡との影響関係についての研究が課題となることで認識が一致した。(4) 代表者は台湾の中央研究院において居延旧簡の既発表簡及び未発表簡の調査を行った。その結果、写真版ではわからない墨痕や傷・くぼみなどが確認された。また未発表簡牘の中にも文字を有するものがあることも確認できた。また舘野は西安・洛陽・上海において都城遺跡や墓誌などの文字資料を調査し、また研究者との意見交換を行い、最新の研究成果を得た。
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