研究課題/領域番号 |
21242023
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
角谷 常子 奈良大学, 文学部, 教授 (00280032)
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研究分担者 |
冨谷 至 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70127108)
藤田 高夫 関西大学, 文学部, 教授 (90298836)
関尾 史郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70179331)
鷹取 祐司 立命館大学, 文学部, 教授 (60434700)
寺崎 保広 奈良大学, 文学部, 教授 (70163912)
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キーワード | 木簡 / 簡牘 / 東アジア |
研究概要 |
■本年度に実施した研究活動 1.全員が集まる大研究会と小規模な研究会を各々3回開き、研究発表を行った。こうした研究会では日本・中国・韓国における研究状況や、木簡の使用状況及びその背景について、相互が理解を深め、東アジア全体で議論ができる新たな視覚・概念の創出に役立てることである。当初はなかなか議論がかみ合わなかったが、ようやく「木簡の使用状況やシステムは、それを動かす行政のありかた、統治思想など、人間の考え方に深くかかわる」との共通認識が生まれて来たことが大きな成果である。 2.北京でのシンポジウム開催 8月29~30日、北京の花園飯店において、政法大学との共催で、シンポジウムを行った。これは、当初の計画の通り、我々の研究の中間報告と位置付けたもので、海外で発表し、批判を得ることによって問題点を見出し、最終成果につなげるためのものである。特に中国においては、日本木簡はなじみが薄く、予想通り、反応はいま一つの感が否めない。しかし、反応の弱さは無関心ゆえではなく、どう反応してよいかわからないとまどいであり、それは我々日本人の中国簡牘研究者と日本木簡研究者との戸惑いと同じであろう。実際、中国人研究者からは、新鮮な情報として好意的に受け止められたようで、シンポジウム終了後も質問やアドバイスなど、積極的な意見交換が行われた。このシンポジウムを通して、東アジア全体で議論できる木簡学の構築という構想は、中国や韓国の研究者にも十分理解されたと考えており、これは木簡学における新たな一歩と自負する。 3.秋田における木簡現地調査 2月に、払田柵及び秋田城における現地調査と秋田大学における研究会を開いた。現地調査では、木簡の出土場所のみならず、周囲の環境や柵が築かれた歴史的状況及び柵の意義について、現地の研究者と有意義な意見交換ができ、木簡の使用を、政治・社会・環境といった大きな枠組みの中で考える必要を再認識することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各国の木簡学から東アジア全体で議論できる木簡学の確立が目的である。そのため、まずは各自が他地域における木簡学の状況を理解し、常に東アジア全体を自覚的・意識的に視野に入れた木簡研究を行なわなければならない。そのため、全体研究会及び小研究会、また韓国・中国・日本における木簡共同調査を積み重ね、その努力を続けてきた。その結果、研究会開始当初に比べ、他地域の木簡研究についての知識と認識は格段に高まり、議論がかみ合うようになっている。その結果、昨年北京で開催したシンポジウムにおいては、「木簡を動かす人間」に注目すべきとの大きな共通認識が、期せずして浮かび上がった。こうした方向をさらに深化させれば、目標に到達できるのではないかと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究推進方法としては、これまでの計画通り、研究会活動と現地調査を通して、個別研究を伸展させると同時に、相互理解を深め、東アジア木簡学確立のための新たな視覚・概念を考える。ただ、余すところ2年であるので、次年度は単なる個別研究の枠を越え、他地域の木簡研究を見据えたより具体的な研究に力点をおく。そしてそれらの研究成果を、最終年度における奈良大学で開催予定の国際シンポジウムで発表し、年度末の報告書に結実させる予定である。
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