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2011 年度 実績報告書

東アジア木簡学の確立

研究課題

研究課題/領域番号 21242023
研究機関奈良大学

研究代表者

角谷 常子  奈良大学, 文学部, 教授 (00280032)

研究分担者 冨谷 至  京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70127108)
藤田 高夫  関西大学, 文学部, 教授 (90298836)
関尾 史郎  新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70179331)
鷹取 祐司  立命館大学, 文学部, 教授 (60434700)
寺崎 保広  奈良大学, 文学部, 教授 (70163912)
キーワード木簡 / 簡牘 / 東アジア
研究概要

■本年度に実施した研究活動
1.全員が集まる大研究会と小規模な研究会を各々3回開き、研究発表を行った。こうした研究会では日本・中国・韓国における研究状況や、木簡の使用状況及びその背景について、相互が理解を深め、東アジア全体で議論ができる新たな視覚・概念の創出に役立てることである。当初はなかなか議論がかみ合わなかったが、ようやく「木簡の使用状況やシステムは、それを動かす行政のありかた、統治思想など、人間の考え方に深くかかわる」との共通認識が生まれて来たことが大きな成果である。
2.北京でのシンポジウム開催
8月29~30日、北京の花園飯店において、政法大学との共催で、シンポジウムを行った。これは、当初の計画の通り、我々の研究の中間報告と位置付けたもので、海外で発表し、批判を得ることによって問題点を見出し、最終成果につなげるためのものである。特に中国においては、日本木簡はなじみが薄く、予想通り、反応はいま一つの感が否めない。しかし、反応の弱さは無関心ゆえではなく、どう反応してよいかわからないとまどいであり、それは我々日本人の中国簡牘研究者と日本木簡研究者との戸惑いと同じであろう。実際、中国人研究者からは、新鮮な情報として好意的に受け止められたようで、シンポジウム終了後も質問やアドバイスなど、積極的な意見交換が行われた。このシンポジウムを通して、東アジア全体で議論できる木簡学の構築という構想は、中国や韓国の研究者にも十分理解されたと考えており、これは木簡学における新たな一歩と自負する。
3.秋田における木簡現地調査
2月に、払田柵及び秋田城における現地調査と秋田大学における研究会を開いた。現地調査では、木簡の出土場所のみならず、周囲の環境や柵が築かれた歴史的状況及び柵の意義について、現地の研究者と有意義な意見交換ができ、木簡の使用を、政治・社会・環境といった大きな枠組みの中で考える必要を再認識することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

各国の木簡学から東アジア全体で議論できる木簡学の確立が目的である。そのため、まずは各自が他地域における木簡学の状況を理解し、常に東アジア全体を自覚的・意識的に視野に入れた木簡研究を行なわなければならない。そのため、全体研究会及び小研究会、また韓国・中国・日本における木簡共同調査を積み重ね、その努力を続けてきた。その結果、研究会開始当初に比べ、他地域の木簡研究についての知識と認識は格段に高まり、議論がかみ合うようになっている。その結果、昨年北京で開催したシンポジウムにおいては、「木簡を動かす人間」に注目すべきとの大きな共通認識が、期せずして浮かび上がった。こうした方向をさらに深化させれば、目標に到達できるのではないかと考える。

今後の研究の推進方策

研究推進方法としては、これまでの計画通り、研究会活動と現地調査を通して、個別研究を伸展させると同時に、相互理解を深め、東アジア木簡学確立のための新たな視覚・概念を考える。ただ、余すところ2年であるので、次年度は単なる個別研究の枠を越え、他地域の木簡研究を見据えたより具体的な研究に力点をおく。そしてそれらの研究成果を、最終年度における奈良大学で開催予定の国際シンポジウムで発表し、年度末の報告書に結実させる予定である。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] 文書行政の厳格さについて2012

    • 著者名/発表者名
      角谷常子
    • 雑誌名

      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討-シンポジウム報告集

      ページ: 15-29

  • [雑誌論文] 羅州伏岩里百済木簡の基礎的研究2012

    • 著者名/発表者名
      李成市
    • 雑誌名

      日本古代の王権と東アジア(鈴木靖民篇)(吉川弘文館)

      ページ: 253-271

  • [雑誌論文] 日本古代の過所木簡と交通検察2012

    • 著者名/発表者名
      舘野和己
    • 雑誌名

      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討-シンポジウム報告集

      ページ: 145-160

  • [雑誌論文] 大英図書・中国国家図書館蔵のコータン近郊出土木簡-唐代木簡を考えるための覚書-2012

    • 著者名/発表者名
      藤田高夫
    • 雑誌名

      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討-シンポジウム報告集

      ページ: 57-69

  • [雑誌論文] 長沙呉簡中の賦税納入簡について-符券としての側面を中心に-2012

    • 著者名/発表者名
      關尾史郎
    • 雑誌名

      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討-シンポジウム報告集

      ページ: 43-56

  • [雑誌論文] 長沙呉簡中の賦税納入簡について-作成者の問題を中心に-2012

    • 著者名/発表者名
      關尾史郎
    • 雑誌名

      資料学研究

      巻: 9 ページ: 横1-横11

    • DOI

      リポジトリ(http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp:8080/dspace/handle/10191/5048)

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本における紙と木簡の使い分け-考課・選叙制度を例に-2012

    • 著者名/発表者名
      寺崎保広
    • 雑誌名

      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討-シンポジウム報告集

      ページ: 129-144

  • [雑誌論文] 日本における文書木簡の成立と展開2012

    • 著者名/発表者名
      渡辺晃宏
    • 雑誌名

      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討-シンポジウム報告集

      ページ: 117-128

  • [雑誌論文] 漢代における符の展開-割符から文書へ-2012

    • 著者名/発表者名
      鷹取祐司
    • 雑誌名

      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討-シンポジウム報告集

      ページ: 1-14

  • [雑誌論文] 平壌貞柏洞364号墳出土竹簡『論語』2011

    • 著者名/発表者名
      李成市・尹龍九・金慶浩
    • 雑誌名

      出土文献研究

      巻: 10 ページ: 174-206

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 木簡から探る日本古代の交通2011

    • 著者名/発表者名
      舘野和己
    • 雑誌名

      東アジア出土資料と情報伝達(藤田勝久・松原弘宣編)

      ページ: 227-259

  • [雑誌論文] 東亜的共時性2011

    • 著者名/発表者名
      藤田高夫
    • 雑誌名

      東亜文化的伝承与揚棄(王勇編)

      ページ: 3-11

  • [学会発表] 8世紀東アジアの木簡-唐代木簡の周縁2011

    • 著者名/発表者名
      藤田高夫
    • 学会等名
      東西学術研究所研究例会
    • 発表場所
      東西学術研究所(大阪府)
    • 年月日
      2011-12-07
  • [学会発表] 東アジアにおける百済木簡2011

    • 著者名/発表者名
      李成市
    • 学会等名
      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討
    • 発表場所
      北京花園飯店(中国)
    • 年月日
      2011-08-30
  • [学会発表] 視覚木簡の研究展望2011

    • 著者名/発表者名
      冨谷至
    • 学会等名
      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討
    • 発表場所
      北京花園飯店(中国)
    • 年月日
      2011-08-30
  • [学会発表] 紙と木簡の日本における使い分けについて-考課及び選叙制度を例に2011

    • 著者名/発表者名
      寺崎保広
    • 学会等名
      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討
    • 発表場所
      北京花園飯店(中国)
    • 年月日
      2011-08-30
  • [学会発表] 簡牘の形態と精神2011

    • 著者名/発表者名
      角谷常子
    • 学会等名
      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討
    • 発表場所
      北京花園飯店(中国)
    • 年月日
      2011-08-29
  • [学会発表] 大英図書館蔵マザール・トクラク出土木簡からみる紙木併用時代の木簡2011

    • 著者名/発表者名
      藤田高夫
    • 学会等名
      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討
    • 発表場所
      北京花園飯店(中国)
    • 年月日
      2011-08-29
  • [学会発表] 機能からみた長沙呉簡2011

    • 著者名/発表者名
      關尾史郎
    • 学会等名
      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討
    • 発表場所
      北京花園飯店(中国)
    • 年月日
      2011-08-29
  • [学会発表] 日中文書木簡に見える"符"について2011

    • 著者名/発表者名
      鷹取祐司
    • 学会等名
      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討
    • 発表場所
      北京花園飯店(中国)
    • 年月日
      2011-08-29
  • [学会発表] 日本の文書木簡の成立と展開2011

    • 著者名/発表者名
      渡辺晃宏
    • 学会等名
      東アジアの簡牘と社会-東アジア簡牘学の検討
    • 発表場所
      北京花園飯店(中国)
    • 年月日
      2011-08-29

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公開日: 2013-06-26  

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