研究課題/領域番号 |
21242026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 宏之 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (50292743)
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研究分担者 |
和田 恵治 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50167748)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 考古学 / 先史学 / 黒曜石 / 更新世 / 流通・消費 / 環日本海 / 後期旧石器時代 |
研究概要 |
本研究では、EPMA、XRFを用いて遺跡出土黒曜石製石器の産地同定を行い、その石材消費行動と流通を考古学的に分析し、民俗考古学等の先行研究との比較・総合によって得られた行動戦略モデルを通して、環日本海北部地域に展開した更新世人類社会の形成と変容のプロセスを明らかにすることを目的としている。 研究第4年度にあたる本年度は、昨年度に引き続き、各分析項目の研究を継続して実施した。初年度から行ってきた黒曜石産地分析データ集成作業のうち、北海道に関する集成と分析を終了させ、その成果を国際シンポジウム(10月27日~28日、明治大学)にて発表し、『旧石器研究』(日本語、日本旧石器学会誌、25年6月刊行予定)およびERAUL(英語、ベルギー・リュージュ大学出版会)に投稿した。昨年度に引き続き遺跡出土黒曜石のNAA、ED-XRF分析を進め、昨年度実施した国際WSの研究成果とともに、BAR International Series中の論集として編集中である。平成25年度刊行を予定している。2月には、新規に導入したPortable XRFを用いて、北海道帯広市所蔵の更新世遺跡出土黒曜石資料の産地分析を行った。 黒曜石を利用した行動論分析資料の獲得を意図した北海道北見市吉井沢遺跡の発掘調査を11月に3週間行い、整理作業を1~2月に実施した。インドネシア・ロシア(2回)・韓国および国内で関連資料調査を行った。10月には、研究成果の中間報告書を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
原子炉を用いるため我が国では分析装置のないNAAによる北海道の全黒曜石産地の全岩元素組成を明らかにしたことにより、これまで簡易なXRFでは十分に分析出来なかった北海道の産地分析がより高精度で確実に行えるバックボーンを作ることができた。今後この手法を確立できれば、我が国における黒曜石産地同定の標準モデルになりうると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
確実だが分析に時間・費用がかかり装置に制限があるNAAと、簡易なため短時間に大量の資料分析が可能だが分析精度に問題を残すXRFの併用は、現在考え得る最上の黒曜石産地分析手法と考えられる。最終年度である25年度は、この分析手法の確立に努め、完成を目指したい。この手法が確立できれば、今後北海道以外の列島各地の黒曜石産地同定の標準化と高精度化を高レベルで推進することが展望できる。 最終年度である25年度は、研究の完成をさせ、成果報告書を刊行する。
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