本年度は報告書の完成を目指して作業をおこなった。すなわち遺物と記録資料の整理、共同研究者による遺物の検討、研究会の開催、報告書の編集である。過去8回にわたる調査による出土遺物や記録は膨大で、その整理に人件費を使用した。具体的作業内容は以下の通りである。 6月21日、共同研究者による胎土分析調査ならびに出土土器の調査を実施した。7月20日、同じく貝類調査を実施した。8月4日~5日、共同研究15名による研究会を開催し報告書内容について検討し、併せて出土遺物の調査を実施した。9月に図面整理、遺物整理などの準備作業を行い、10月から編集作業を開始して1月末に原稿を入稿し、3月末に報告書『ナガラ原東貝塚の研究-5世紀から7世紀前半の沖縄伊江島』を刊行した。 報告書であきらかにした成果は以下の通りである。①ナガラ原東貝塚は、貝塚時代後期中頃の5世紀から7世紀前半における50年から200年の期間、沖縄地域の複数の地域の人々がこの地を訪れ、一定期間の居住をくり返したことで形成された比較的小規模な遺跡である。②人々はイモガイ科やスイショウガイ科貝類を採取し加工して、種子島地域と密接な関係を保ち、一方で南九州地域とも経済的関係をもっていたとみられる。③この間、人々の日常生活では煮沸容器が尖底を主体とする大当原式土器からくびれ平底を主体とするアカジャンガー式土器に変化した。土器形状の変化はきわめて連続的かつ自律的であり、奄美地域との接触によって促進されたとみられる。人々の生活はこの変化と併行して植物食への比重を高め、狩猟より漁労への比重を高め、網漁にも変化が見られたが、生業の基本的スタイルに変化はなく、自然環境にも目立った変化は認められていない。
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