2009年度は、研究開始の年度でもあり、わが国の少年法を中心とした少年処遇の実際を明らかにするとともに、フランスの少年司法・処遇の実態を調査すること(比較法的研究)に重点を置いて研究を行った。前者については、研究会にゲスト・スピーカーを招くとともに、研究代表者および連携研究者からの報告を中心として進めた。また、精神医学との共働的アプローチを重視するところから、精神医療法研究会との連携のもとで研究会を共同開催し、ほぼ共通の参加者(毎回約30人)で、1月に1回程度の割合で研究会を開催した。また、若干の少年処遇施設の参観を行った。こうした研究会や参観を通じて、わが国の少年処遇の実態について相当の知識を獲得することができたが、現時点では、それらを業績にまとめて公表するまでには至っていない。 フランスでの実態調査についても、精神医療法研究会との共同で1週間にわたって実施し、パリの少年裁判所での少年裁判の見学(アモン所長の好意による)をはじめ、精神医療施設、刑務所、少年・児童処遇施設等を見学するとともに、職員らとの研究会・意見交換の場を持った。これによって、フランスの刑事司法・刑事政策・少年法制・精神医療法制について理解が深まり、比較法研究の基礎とすることができた。ただ、施設の規模と参加人数の関係で、すべての参加者がすべての施設等を参観することは叶わなかったため、フランス訪問団内での共通理解・認識を形成する課題が残されている。そのため、早期に報告書を作成して共通理解を得る必要があることを痛感しており、その作業に着手する予定である。
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