本年度は、以下に述べる3つのサブ・プロジェクトについてそれぞれ予備調査・調査準備を行った。第一のサブ・プロジェクトは、「アフリカ・アジアの貧困と人間の安全保障」プロジェクトである。ここでは、アフリカとアジアの最貧国における貧困削減に必要な新しい技術と制度を識別するようなプログラム評価の準備を行った。アフリカについてはマラリア対策についての研究会を開催した。アジアについては、フィリピンの中部ルソン地域を対象として、灌漑整備の貧困削減効果、とりわけリスクシェアリングを通じた効果を明らかにするため、田植えにおける互酬的な共同作業の構造解明のための実験的な手法を設計し、フィールド実験を行った。その成果を国際開発学会の総会において報告した。 第二のサブ・プロジェクトは、「災害と貧困」プロジェクトである。ここでは、日本と東南アジアにおける災害リスクと人々の災害事前事後の行動に関するミクロデータを整備し、理論的な考察を加えた。成果の一部は、Center for Research of Epidemiology on Disasters (CRED)がベトナムにおいて開催した自然災害に関するカンファレンス(MICRODIS CONFERENCE)において報告された。 第三のサブ・プロジェクトは、「自殺と貧困リスクの経済分析」である。このプロジェクトでは、元東京大学大学院経済学研究科のYun Jeong Choi講師を連携研究者とし、国立政治大学(台湾)のJoe Chen助理教授を研究協力者として、経済理論の知見とデータによる実証解析という2本の柱から、日本における自殺の決定要因を捉え、有効な政策手段を明らかにする。平成22年度は、これらのメンバーの協力の下で実施した一連の分析を取り纏めた展望論文がJournal of Economic Surveysに採択された。
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