平成21年度の研究を引き続き発展させた。特に、課税競争、財政支出、財政赤字での競合、住民のモニタリング、コミットメントの効果など、各研究者で分析対象がある程度重なり合う分野、枠組みを中心に、共同研究の相互交流をより活発化し、研究成果の向上を図った。すなわち、代表者は全体の研究計画が円滑に進展すべく調整するともに、海外研究者との共同研究作業を着実に実行した。 同時に、平成22年度は国際的枠組みでの政府間財政競争と協調について、本格的研究を進めた。まず、政府間財政競争と協調の分析に有効な概念である最適財政圏のモデル化に取り組むとともに、安全保障や地球環境問題など国際公共財供給問題で競争とただ乗りのメカニズムを考察した。また、情報、資金、労働、財・サービスが自由に移動しているときに、国際機関や政府間交渉による協調の枠組みが利害調整メカニズムとして有効なあり方を考察し、国際政府間の関係における財政競争と協調それぞれのメリットとデメリットを比較検討する研究も始めた。 本年度の具体的な研究成果は以下の通りである。(1)課税競争の均衡供給ルールであるホイット・ルールが、撹乱的課税や所得・資産格差を考慮すると、どのように修正されるのか、また、最適水準からの乖離の程度がどんな要因に依存するのかを理論的に分析するとともに、効用関数や生産関数を特定化して、実証的、定量的に解析した。(2)政治経済学の理論モデルを用いて、財政規律欠如の国際的波及効果に注目して、財政規律の国際協調のメリット・デメリットを分析した。(3)動学ゲーム論の枠組みを用いて、公共財の自発的供給メカニズムに内在するただ乗り誘因、先送り誘因を是正する協調メカニズムを理論的に分析するともに、その長期的な特徴を数値解析で解明した。
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