研究課題
本研究は、境界のマネジメントという視点からイノベーションを実現していく仕組みや過程を理解し、競争優位やイノベーションの実現に向けて日本企業の課題を明らかにしようとするものであった。情報通信、自動車、バイオテクノロジーの三分野を中心に個別の実証研究を進め、情報通信では、複数市場間でのネットワーク外部性とその競争への影響の実証分析、自動車では日本の自動車メーカー各社の系列取引構造の変化とその要因と意味の実証分析、バイオテクノロジーでは、日米の産学官連携ネットワークを比較する実証分析などを行ない、その成果を内外で公表した。また、個別研究の結果を踏まえつつ、イノベーション研究へ新たな理論的視点の可能性を探っていく作業も進めた。エコシステムにおける境界の意味、イノベーションの実現過程における組織境界の意味を考察する研究成果を公表し、さらに、海外から研究者を招いてイノベーションと企業の境界を多様な視角、データから議論する機会を二回設け、さらなる研究への方向性を探り出していった。これらの研究、議論を通じて、境界を所与・安定したものとすることなく、多角的・動態的にとらえ、多層的なマネジメントを進めていことがイノベーション、競争優位の実点にとって重要であり、その点において日本企業は課題を抱えていることが示唆された。こうした成果は「境界のマネジメントとイノベーション」という視点が重要であり、この視点に基づく研究の継続が有意義であることを意味していると考えられる。
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