研究課題
本研究では、乳児を対象とした実験研究を実施し「アクティブな知覚」である、能動的な知覚認知機能の発達の解明を目的とする。これまで研究代表者が解明してきた視知覚機能が、動かない乳児を対象とした「受動的な知覚」であるとすれば、本研究では、抑制と制御により自己の身体機能を有効に利用した「能動的な知覚」を対象とする。その一つが、空間を見る能力であり、「両眼立体視」と「単眼と両眼」で空間を見る能力の発達を検討する。次に、視覚的な情報を用いて、身体を連動して動かす能力に関する検討を行う。視覚刺激に誘発される身体の動揺という受動的な運動と、リーチングという能動的な運動を伴う知覚の発達について検討する。さらに、目の前の注意すべきものに注意を配分する注意の機能の発達を扱う。これらの能力は、乳児から幼児期を経て学童期となり、能動的に外界に関わるために必要な能力であり、こうした機能の統合過程は、後々の認知発達に必要な能力と考えられる。こうした高次な知覚統合過程は、近年社会的に問題とされる「発達障害」を解明するための足がかりとなる基礎研究である。研究成果として、東京工業大学の金子寛彦准教授らとの共同研究により、生後6ヶ月の乳児が、左右眼の像の垂直方向のずれである「垂直視差」を用いて奥行きを知覚できる可能性を世界で初めて実験的に明らかにし、Vision Sciences Society 11th Annual eetingにおいて成果報告をし、国際誌に投稿中である。さらに、当初の計画が順調に経過しているため、視覚的な知覚認知機能に加え、嗅覚と視覚の連合についても検討を進め始めており、国際誌及び学会等で成果報告を行っている。その他、上記含めて計13篇の英語論文が採択されるとともに、国内学の学会でも多くの発表をおこなった。
1: 当初の計画以上に進展している
採択後これまでの3年間で、国内外の学会等においても、数多くの研究成果を発表してきた。国際誌30本、国内紙8本の論文を公刊したことは当初の予想を上回る成果であり、いずれも評価の高い良質の学術雑誌である。したがって、当初の計画以上に進展していると評価できる。
これまでの成果をもとに、行動実験を引き続き行い、乳児における能動的な知覚認知機能を明らかにする。今後は、引き続きデータを整理し、研究の成果を学術論文及び学会等において報告していく予定である。さらに、当初の計画がスムーズに進行しているため、これまでの視覚的な知覚認知機能に加えて、新たに嗅覚と視覚の連合についても検討を進めている。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件) 学会発表 (29件) 図書 (5件) 備考 (1件)
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http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~ymasa/