研究概要 |
小澤グループは,不確定性原理から導かれる非可換物理量の同時測定可能性を研究して,1量子ビット上で狭義に非可換な(共通の固有ベクトルを持たない)物理量が同時測定可能になるのは,一方の物理量の固有状態のときであり,その場合に限ることを証明した.従来,狭義非可換物理量は同時測定不可能と考えられてきたが,本研究により量子測定理論の厳密な数学的定式化のもとで、その同時測定可能性が初めて明らかにされた.小澤グループは,量子計算の精度限界を制御系との相互作用が満たす保存法則から導くことを研究して,以下の成果を得た.任意のユニタリゲートU_Sを任意の加法的保存量L_S+Lの存在のもとで実装すると,実装されたゲートのユニタリゲートU_Sに対する非忠実度がB=sin^22γ/(4+4σ(L/c)^2)以上であることを導いた.ここに、L_Sは量子ビット系の保存量、Lは制御系の保存量、2γはL_Sの回転軸をU_Sの回転軸の周りにθ回転させた軸と回転させる前のL_Sの回転軸との間の角とする.この結果により,スピン1/2の量子ビット上の任意のユニタリゲートをスピンN/2系の制御系との回転不変な相互作用で実装する場合に,0≦θ≦π/2の場合に非忠実度がsin^2θ/(4+4N^2)以上になり,π12≦θ≦πの場合に非忠実度が1/(4+4N^2)以上になることが示された.西村グループは,偽コイン発見問題を解く量子アルゴリズムを研究して,以下の成果を得た.N個のコインの中にk個の偽コインがある場合,古典のアルゴリズムでは情報理論的限界によりklog(N/k)回のオーダの天秤の使用を必要とするが,O(k^{1/4})回でk個の偽コインすべてを発見する量子アルゴリズムを開発した.従来,同一の問題に関する量子計算量と古典計算量のギャップは指数的であるか2乗以下に限られていたが,これにより,4乗のギャップを持つ自然な問題が発見された.
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