研究概要 |
平成21年11月に高知大学において、若手研究者の教育目的もかねた研究集会「Kohchi School on Random Schrodinger Operators」を行い、J.M.Combe,A.Klein,G.Stolz,F.Germinet,P.Muller,F.Kloppらを招聘した。またこれらの研究者の多くは、京都数理解析研究所におけるランダムシュレディンガー作用素の研究集会にも出席、研究発表を行い、研究代表者、研究分担者、研究協力者を含む、当該研究分野の研究者との研究交流、共同研究を行った。 また、幾何学的・超局所的散乱理論の研究のために、J.M.Bouclet,C.Villegas,I.Alexandrovaの招聘を行い、研究発表、研究交流、共同研究を行った。これらの招聘に関しては、21年度中の小研究集会の開催を計画していたが、招聘研究者の都合により、22年度に繰り越して行われた。 また、研究代表者、研究分担者を中心とする当該分野研究者の旅費等、当該分野の研究の促進のために経費を支出した。研究成果の中から、研究代表者の得た研究成果を中心に以下概略を述べる。 中村(研究代表者)は、F.Kloppとの共同研究により、非定符号を持つ局所ポテンシャルを持つランダムシュレディンガー作用素のリフシッツ特異性、アンダーソン局在に関する研究結果を得て、論文として研究発表した。また、ここで得られた手法を用いて、M.Loss,F.Klopp,G.Stolzとの共同研究として、ランダム・ディスプレースメント・モデルと呼ばれる作用素のアンダーソン局在に関する研究成果を得た(投稿中)。これらの共同研究には、上記の研究集会前後の共同研究が大きな部分を占めている。 中村は、伊藤健一(筑波大学)との共同研究により、散乱多様体と呼ばれるリーマン多様体上のシュレディンガー方程式の解の特異性の伝播、散乱理論、散乱作用素の超局所解析の研究を行い、いくつかの研究成果を得た(論文2編出版済み、2編投稿中)。これらは、上記の幾何学的・超局所的散乱理論の研究者招聘と密接に関係しており、継続的に研究交流、共同研究を行っている。また、中村とA.Martinez,V.Sordoniの共同研究として、変数係数シュレディンガー方程式の解の解析的特異性の解析に関する研究成果を得て論文発表を行った。これらのついても共同研究の継続を計画している。 中野(研究分担者)は、ランダムシュレディンガー作用素の研究、特に準位統計に関する研究、ドミノタイリングに関する研究などを行った。 足立(研究分担者)は、外場(電場、磁場)中の2体および多体のシュレディンガー方程式の散乱理論、特に完全性についての研究を行った。 藤家(研究分担者)は、超局所的手法を用いて、シュレディンガー方程式の量子力学的共鳴や散乱振幅の半古典極限の研究を行った。
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