初期条件としてΛCDMモデルで現在標準的に使用されている宇宙論パラメータのダークマターの密度揺らぎを考え、その総質量や質量分布等を変化させた場合のシミュレーションを実行した。また、このような計算で得られた結果と、実際の観測データを直接比較するため、ガスやダストからの放射に関してはMAPPINGSIIIコード(Sutherland & Dopita 1993)等を使って、計算結果のガスの密度、温度、重元素量からの放射を計算し、そのSpectral Energy Distributionを求めた。そして理論的に予想されるライマンアルファ輝線の空間分布と研究協力者の共同研究者らによって得られたSSA22領域の観測データとの精密な比較をおこなった。また、ダストからの赤外線放射との関係についても輻射輸送計算を行い調べ、サブミリ銀河とライマンアルファ輝線銀河との関係について詳細に解析した。 さらに、銀河風として銀河から流出するガスの流れとダークマターハローの構造との関係を詳細に調べ、近傍銀河との比較も行った。最近近傍宇宙で発見されているLocal LAE(TypeII LAE)とマイナーマージャーとの関連を大規模流体シミュレーションを用いて調べるための予備計算を行った。また、ライマンアルファ輝線天体やライマンブレイク銀河、赤外銀河等の物理状態において銀河衝突が重要な役割を担っている可能性を鑑みて、銀河衝突シミュレーションを用いた解析を精力的に行い、近傍銀河で見られた銀河衝突現象を再現するシミュレーションモデルを構築した。理論と観測の相互のフィードバックサイクルを徹底的におこないながら銀河の標準進化模型の構築を推し進めた。
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