研究課題/領域番号 |
21244017
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
粟木 久光 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (30252414)
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研究分担者 |
黄木 景二 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (70281194)
寺島 雄一 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (20392813)
高坂 達郎 高知工科大学, 工学部, 准教授 (80315978)
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キーワード | 宇宙物理 / X線天文学 / 活動銀河核 / 望遠鏡 |
研究概要 |
本研究は、活動銀河核に存在する超巨大ブラックホールがいつどのように誕生し、成長してきたのか解明することを目的としており、そのために必要な観測的研究、ならびに観測機器の開発を行っている。 1.観測的研究 X線変動を用いた低質量ブラックホールの探査に関する研究を行い、論文1編ならびに学会発表を行った。これにより、進化の初期段階のブラックホール探査法を確立した。また、Swift/BATによる硬X線観測結果や「あかり」による赤外線観測結果を用いたAGNの構造解明についての研究を進め、学会発表を行った。 2.観測機器開発 (1)基板開発:ハウジング製作用に考えていたCFRPを望遠鏡基板に適用し、従来のアルミ基板よりも数倍近く高い形状精度(σrms~2μm)を実現した。この基板に反射面を形成することで、目標以上のX線結像性能が期待できる。 また、衛星打ち上げ環境下での反射鏡の振る舞いを有限要素法解析で調べ、その共振特性を明らかにした。このデータは反射鏡を飛翔体に搭載する際の貴重なデータとなる。 (2)レプリカ法による反射面の形成:多層膜レプリカ技術を共同研究者の研究室(名古屋大学)で確立させた。また、2段1体型非球面基板に対するレプリカも試み、その課題を抽出した。 (3)ガラス母型製作:本研究で開発したガラス母型研磨装置を使って、研削により形状精度を出したガラス母型(長さ400mm,Φ200mm、表面粗さ1μm)を研磨した。その表面粗さを数nmにまで改善させた。 (4)ハウジング製作:反射鏡を決められた位置に精度よく調整する方法として、ピエゾ素子を使った方法を確立した。この方法はASTRO-H衛星搭載用望遠鏡開発にも採用されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究テーマは、観測的研究と硬X線望遠鏡開発の2つから構成される。今年度は、研究代表者が硬X線望遠鏡の開発に時間を費やしたことで、望遠鏡開発はおおむね順調に進んだが、その分、観測的研究がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.観測的研究 本年度は、Compton Thick活動銀河核の研究会を6月に愛媛大学で開催する予定である。また、現在進行中の「すざく」衛星を使った観測結果をまとめるととともに、「あかり」衛星の観測結果を使った研究も進める。 2.硬X線望遠鏡の開発 (1)X線反射鏡開発:残された技術的課題は鏡面製作技術の確立であり、そのために解決すべき課題は時間の経過とともに反射面の表面粗さが悪化することである。この表面粗さの経年変化はCFRPの膨潤変形によるものと考えられており、この変形を抑えるために表面コーティングが有効であることが知られている。各種コーティングを試みるとともに、CFRP反射鏡を開発している他の研究者と相談し共同でこの課題克服にあたる。 (2)研磨技術:ワーク表面に深い研磨傷をつけないための、最適な研磨圧を調査する。これにより表面粗さ1nm以下が実現可能となる。 (3)評価:最初のX線望遠鏡が7月末に組み上がる。このX線評価を8月に宇宙科学研究所にて、10月以降にSPring-8にて実施する予定である。
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