研究概要 |
国立天文台がチリ共和国のアタカマ高地に有するASTE望遠鏡でのVLBI観測を実現するために、本年度はVLBI観測に必要な装置の整備を中心に行った。まず、チリのASTEサイトで観測装置群を設置するためのコンテナハウスを整備し、2009年11月にチリのアタカマ高地宛てに発送した。また、VLBI観測のために必要な高安定度時計装置として、オシロクオーツ社の高安定度クリスタル発信機および基準信号分配器などを購入した。また、周波数変換装置(ダウンコンバーター)を作成するための各種高周波コンポネントを購入し、我々の実験室において動作試験を行いつつダウンコンバーターとして仕上げた。また、VLBI観測で使用する230GHz帯の受信機として、国立天文台のALMA用のプロトタイプとして開発された受信機を改修し、ASTE望遠鏡に最適化した光学系を搭載した。また、信号を周波数変換するための局部発信機として逓倍器を購入して、その安定度も評価した。さらに、観測データを記録するために必要なHDDやSSDを購入した。これらの装置群も2009年秋から2010年年初にかけてチリのアタカマ高地宛てに発送し、2010年1月~3月にかけてASTE望遠鏡のサイトでこれらの装置の立ち上げを行った。具体的には、実際に230GHzの受信機を望遠鏡に搭載して冷却し、天体に向けて受信機試験を行い、木星など標準天体の受信に成功している。さらに、2010年3月には、アンテナからデジタルバックエンドまでの信号伝送試験およびその安定度計測試験に成功し、ASTEでのVLBI観測を実行可能な状態まで立ち上げを完了した。これらの結果を元に、2010年4月には米国MIT,Harvardなどとの国際観測が計画されており、ブラックホールの撮像に向けた実験が開始される予定である。
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