国立天文台がチリ共和国のアタカマ高地に有するASTE望遠鏡を用いて、2010年4月にVLBI観測を行った。具体的には、米国アリゾナ州のSMTO、ハワイ州のSMAを相手局とし、ASTEを含めた3局による230GHz帯でのVLBI観測を2晩行い、いくつかの参照電波源や本研究の主対象であるSgr A*などを観測した。これは、チリ局を含んだ国際的な230 GHz VLBIとして世界で初めてものである。相関処理は米国ヘイスタック観測所および国立天文台の三鷹で行い、日本での相関処理については、我々がこれまで開発してきたソフト相関器を用いることで、非常に広いパラメーター範囲内でフリンジ探査を行った。これまでのところ今回の観測からは参照電波源天体も含めてフリンジが検出されておらず、チリを含む基線は6000kmから9000kmと長いために、天体の構造が著しく分解された可能性も含め、現在その原因を追究している。天体が分解されている場合には、チリを含む基線での天体の強度が1Jy程度以下という制限が得られ、天体の輝度温度に制限がつけられる。なお、この観測データの処理に関連して、国立天文台にて大容量の観測データを保持するために、磁気記録装置OCTADISKを購入した。また、2010年以前の230GHz VLBIの(ASTEを含まない)観測についても国際協力のもとに処理を進め、2009年の観測ではSgr A*が数日間に数十シュバルツシルト半径のサイズで構造が変化していることを見出し、論文としてまとめた。今後はこれらの結果をベースにさらに追加観測を行い、230GHz帯でのVLBI観測でさらなる科学的成果産出を進める。
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