研究課題/領域番号 |
21244022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 正彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10183914)
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研究分担者 |
寺田 宏 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (00425406)
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キーワード | 天文学 / 光学赤外線天文学 / 波面補償光学 / 系外惑星 / ドップラー法 / 惑星系形成 / 高分散分光 / 回折格子 |
研究概要 |
平成23年度においては、主に1、高精度大型Siイマージョン回折格子の光学的貼り合わせの検討追求 2、2ミクロン帯ガスセル導入による地球型惑星探査の始動、及び 3、高分散分光器の高安定性獲得の為の機械系の組み上げ、を行った。 1、本研究課題において我々がドライイオンビームエッチングを用いることで世界で初めて製作に成功した高精度大型Siイマージョン回折溝板は、回折格子としての成立の為に、Siプリズムとの極めて精密な接合(2nm以下の接着度)を要求する。接合には、焼成過程が本質的な役割を果たすことを突き止め、その詳細パラメータ(焼成温度、圧力、洗浄媒質)の調整と追求を進めた。 2、本研究課題の一部として導入した赤外線用アンモニアガスセル導入により、スペクトル型M4VからLOVまでの小質量星を対象に、高分散分光装置IRCSによる波長分解能(R)20,000の2ミクロン帯観測を遂行した。観測は、補償光学系と組み合わせて行われ、α.14という極細のスリットに回折限界のシャープな星像を入射し、極めて高感度の分光データが得られた。解析の結果我々は、視線速度決定精度23.6m/sの計測に成功した。これは、R=20,000で達成した世界最高精度の視線速度決定であり(これまでは、100-300m/s)、本課題で目指す10m/sの視線速度決定精度に向けた重要な進展となった。 3、高分散分光器には高い再現性を持った機械系が必須となる。この為、現時点で冷却真空中で最も安定性を有するモーター及びコントローラーを入手し、これの組上げ試験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大型Siイマージョン回折溝板の光学的な接合が、本課題を設定した当時よりも、要求精度が厳しいことが判明している。一度接合を行った場合、溝基板に損傷を与えることなく解離することは極めて困難となる為、接合検討の調査には十分な時間を割いている。この為、進捗にやや遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、平成23年度中に達成した23.6m/sの視線速度決定を追求する為、さらに広範な天体サンプルに対して赤外ガスセルを用いた赤外線高分散観測を進めていき、赤外線視線速度決定法で初めての地球型惑星の検出を目指す。また、これと並行して、大型siイマージョン回折溝基板の高精度光学的接合の実行に進み、視線速度決定のさらなる向上をもたらす分散素子を完成させる。さらに、機械系、電気系の安定性の向上にも取り組み、高分散分光装置IRCSを最終的に10m/sの視線決定精度に迫る観測装置に仕上げる。
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