研究課題/領域番号 |
21244026
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
酒見 泰寛 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (90251602)
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研究分担者 |
村上 哲也 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (50219896)
畑中 吉治 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (50144530)
若狭 智嗣 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (10311771)
伊藤 正俊 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助教 (30400435)
吉田 英智 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教育研究支援者 (20399744)
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キーワード | 電気双極子能率 / フランシウム / 表面電離型イオン源 / 時間反転対称性 / CP非保存 / 超対称性 |
研究概要 |
物質・反物質非対称性の生成機構解明を目指し、レーザー冷却不安定原子を用いた電子電気双極子能率(EDM)の新しい探索技術を確立する。基本粒子がEDMを持てば、時間反転対称性、そしてCPT対称性が厳密になりたっている場合、それはCP対称性の破れを意味する。EDMは標準模型からの寄与は無視できるほど小さく、標準模型を超える現象、未知の対称性・相互作用を探索するのに重要である。本研究では、アルカリ原子の最外殻電子のEDMが、相対論効果により電荷の3乗に比例して増幅されることに着目し、電子EDM増幅度最大である原子量最大のアルカリ原子・フランシウム(Fr)を測定対象として選択した。フランシウムは、放射性元素であり、原子核反応を用いて生成する必要がある。EDMの測定感度を支配する主な要因は、測定Frの個数、印加電圧、スピン偏極保持時間、測定時間であるが、放射性元棄を用いるEDM探索の場合、統計精度を支配する原子の収量が鍵となっている。本研究では、この放射性元素Frを大強度で、安定生成する装置の開発を行った。Frは加速器からの180ビームと金標的による融合反応により生成し、標的中に生成されたFrを熱拡散により標的表面へ移動させ、Frのイオン化ポテンシャルより大きい仕事関数を有する金標的表面からFrイオンとして引き出す。本研究によりターゲットである金を融解させた状態で、融合反応を起こしてFrを生成させると、ターゲット中での拡散係数が大きくなり、高収量と短い引き出し時間を実現することが確かめられた。そこで、一次ビームをSwingers磁石によって上方からターゲットに入射させ、また、ターゲットは融解した状態でも下に落ちないよう、高温オーブン中に上向きに配置することで、融解した状態を維持しつつ、安定にFrを生成することに成功し、収量と引き出し効率は、この融合反応を用いる方式での世界最高レベルに達した。さらに、引き出し電極とその下流に設置したアインツェルレンズの構造を、3次元電磁場計算とイオン光学シミュレーションにより設計の最適化を行い、改造を施した。その結果、収量が5倍増強されることをRbビームで確認し、EDM測定に十分に必要なFr生成収量を実現した。
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