研究概要 |
我々(チベットASγ実験グループ)は、1990年以来中国と共同で中国チベットの羊八井高原(ヤンパーチン、標高4300m)に広視野空気シャワー観測装置(現在は略称Tibet-III、有効面積が約37,000m^2,厚さ3cm x面積0.5m^2のプラスチックシンチレーター検出器総計789台を7.5m間隔に配置、角度及びエネルギー分解能は100TeVで各々0.2度及び40%)を設置し、高エネルギー宇宙ガンマ線・原子核宇宙線の研究を行っている。我々は既にカニ星雲、MrK421,Mrk501等から飛来する1TeV(=10の12乗電子ボルト)領域のガンマ線信号の観測に成功しており、本申請ではその成果に基づく飛躍的な発展を目指す。本研究では、空気シャワー観測装置(既存のTibet-III)と地下大型(800m^2)水チェレンコフ型ミューオン観測装置(本申請で新設予定)の併用という独創的な試みにより、最高エネルギー(100TeV領域:5x10^<13>-10^<15>eV)宇宙ガンマ線放射天体の低雑音広視野連続観測を世界で初めて行う。 本年度は、現在チベットで稼動中の空気シャワー観測装置Tibet-IIIの地下2.5mに大型(800m^2)水チェレンコフ型ミューオン観測装置を建設するための様々な準備を行った。地下プールのための建設図面が完成し、エレクトロニクス系の整備、データ収集システムの構築等の作業を行った。また、100m^2のプロトタイプミューオン検出器とTibet-IIIで取得された連動実験データの解析を行った結果、シミュレーションがデータを良く再現していることが判明した。これにより、最高エネルギー宇宙ガンマ線観測の雑音となる原子核宇宙線除去能力が実験的に検証できたことになる。
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