研究課題/領域番号 |
21244028
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
柴田 利明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (80251601)
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研究分担者 |
中野 健一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (20525779)
澤田 真也 大学共同利用機関高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (70311123)
宮地 義之 山形大学, 理学部, 准教授 (50334511)
後藤 雄二 独立行政法人理化学研究所, 延與放射線研究室, 先任研究員 (00360545)
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キーワード | 陽子構造 / 反クォーク / 原子核 / ドレル・ヤン / 対称性 |
研究概要 |
本研究ではアメリカ・フェルミ国立加速器研究所(FNAL)の120GeV陽子ビームを固定標的(液体水素及び液体重水素)に照射してドレル・ヤン反応を測定する。SeaQUest(E906)実験、と呼んでいる。ドレル・ヤン反応とは、一方の腸子の中のクォークと他方の陽子の中の反クォークが対消滅していったん仮想光子になり、ミューオン対に崩壊する反応である。反クォークを特定できることが特徴である。そのミューオン対を検出し運動量を決定するために磁気スペクトロメータを建設した。磁気スペクトロメータにおいて、大型荷電粒子飛跡検出器(ドリフト・チェンバー)は主要な装置であり、日本グループはその製作と運転を担当している。ドリフト・チェンバーの製作は前年度までに日本で順調に進み、前年度には飛行機便でフェルミ研に輸送した。今年度の目的は、それを磁気スペクトロメータに組み込み、準備運転をした後に、加速器からの陽子ビームを用いて案験を行うことであった。実際、今年度末の2月から陽子ビームでの実験が始まり、今年度の目的を達することができた。2月の「Femilabニュース」にこの成果が掲載されている。 フェルミ研の加速器担当者の努力により、加速器から実験室までの陽子ビーム輸送系の調整が精力的に進められ、多くの技術的な困難を克服して今年度に陽子ビームが得られたことは、特筆すべきことである。陽子ビームが得られてからは、プラスティックシンチレータによるトリガーシステムとのタイミングの調整、飛跡再構成、バックグラウンドの除去などが急速に進展した。 これらと並行して、東工大に置いてあるテスト・ドリフトチェンバーを用いた基礎的な研究も推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までのドリフト・チヱンバーの日本での製作、フェルミ研への飛行機便による輸送に続き、今年度には、予定していたとおり、磁気スペクトロメータへの組み込み、および加速器からの陽子ビームを実際に用いた実験が実現し、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、平成24年2月-4月の陽子ビームのビームタイムによる実験で得られたデータを解析し、ドリフト・チェンバーの性能を完成させる。実際の陽子ビームでの反応からのミューオン対が磁気スペクトロメータの全体としての性能を検証するのに適している。更に、今回製作したドリフト・チェンバーの性能に基づいて、磁気スペクトロメータ中の他のドリフト・チェンバーについても立体角を上げるなどの改良を行う。ドレル・ヤン反応の物理のデータ解析も進める。次年度末から予定されている長期ビームタイムに向けて、SeaQuest実験装置の完成をさせる。
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