研究課題
i)中性バリウム(Ba)は、基底状態(1SO)近辺にラムダ型のエネルギー準位を有する。中間状態(1P1)と基底状態のエネルギー差は波長に換算し554nm、終状態(1D2)とのそれは1500nmである。D状態は寿命が長く、準安定である。このため、二光子対超放射の実験的検証に適していると考えられている。本年度においては、このD状態を実現することを目標の1つとした。このために、まずヒートパイプを製作し、その基礎特性を確認した。その後、バリウム標的に554nmレーザー光を照射して、P状態からD状態への超放射を観測した。また、観測された超放射強度の標的密度依存性、放射の角度依存性、遅延時間と標的密度との関係等を実験的に明らかにし、理論予想と比較した。更に1500nmレーザー光を照射すると、当該超放射が誘起され、超放射の強度が強くなること、それに伴い遅延時間が短くなること等を発見した。ii)窒素原子内包フラーレン(N@C60)は不対電子をもつ窒素原子がスピン状態を保持したままフラーレンに内包された分子であり、優れた緩和時間特性及び量子干渉性を示すことが知られている。我々は、二光子対超放射の標的としてN@C60を視野に入れているが、生成量が少なく、高純度の試料を得ることが難しいのが欠点である。本年度においては、イオン衝撃法によって生成したN@C60とC60混合試料に対し、リサイクル高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法を用いてN@C60の分離および濃縮を行った。この結果、10^13個の高純度N@C60の作成に成功した。現在は、内包された窒素原子の励起準位の性質を研究している。iii)このほか、ルビジウム(Rb)からのカスケード超放射の視測や、二光子対超放射に関連する理論及びシュミレーションの研究を行った。また今後の研究の方向性として、バリウムイオンを検討し、良い見通しを得た。
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Progress of Theoretical Physics 123
ページ: 523-532