研究課題
1.Ba気体セルからの二光子対超放射研究バリウム原子準安定状態(D準位)を用いた二光子対超放射過程に関する研究が進展した。特に二光子過程を誘起するに必須であるトリガーレーザー(波長1755nm)を製作し、その評価を行った。その結果、出力10mW・パワー揺らぎ約1%・周波数安定度100MHz(peak-to-peak)なる結果を得た。これらの値は我々の目的に対し十分な性能を有することを示している。またこれを用い二光子対超放射実験を開始したところ、二光子過程に付随すると考えられる信号を観測した。今後はこの信号の詳しい性質を調べる。2.誘導ラマン散乱法によるパラ水素倍音振動励起モードの研究固体パラ水素分子の振動励起モードからの二光子対超放射過程はマクロコヒーラント増幅機構を証明する有力な方法である。誘導ラマン散乱法により励起された倍音(v=2)振動モードのコヒーランス持続時間の測定を行い、25ナノ秒以上であるという結果を得た。またコヒーランス時間を左右する主要な位相緩和過程を実験的に解明し、不純物(オルソ水素)、格子欠陥、フォノン等が要因となっていることを明らかにした。以上の結果は、パラ水素が固体として極めて長いコヒーランス時間を有し、二光子対超放射の標的として有望であること示している。この成果に基づき二光子対超放射実験に移行した。3.マトリックスに単離されたビスマス原子の分光研究ネオンを母体とするマトリックス中にビスマス原子を導入し、ビスマスの吸収分光実験を遂行した。その結果、多数の長寿命準位を観測することに成功した。今後は準位の同定を行い、マトリックス母体とビスマスとの相互作用を解明する。
2: おおむね順調に進展している
二光子放射の可能性が高い信号が観測されたこと、及びパラ水素分子を用いた爆発的二光子対超放射実験の準備が整ったことは本研究の目的を達成する一里塚として極めて意義が高い。これより研究計画は概ね順調に進展しつつあると結論できる。
バリウムについては、現在観測されている信号の性質を詳細に調査すると共に、爆発的二光子対超放射現象の条件に近づけるため、標的密度の増大、標的長さの延伸、コヒーランスの増大を図る。またパラ水素分子を用いた実験については、コヒーランスの良いレーザーシステムを構築し、新現象発見に取り組む。
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J.Phys.Chem.A
巻: Vol.115 ページ: 14254-14261
10.1021/jp207419m