研究概要 |
代表者・佐々木は、宇宙論の様々な場面で現れる互いに共形同値の時空に関して、それらの時空における観測量を考察し、共形同値の時空は実験的・観測的に区別がつかないことを明確に示した。また、DBI理論等の一般的なスカラー場モデルにも適用可能な、宇宙論的な長波長極限での非線形曲率揺らぎの保存則を重力理論によらない形で証明した。分担者・田中は、様々なインフレーション宇宙モデルにおける非ガウス性の計算の基礎となる定式化を進めるとともに、赤外発散の問題について真にゲージ不変な観測量の計算が重要であることを明らかにした。 連携研究者も多くの成果を上げた。石原は、5次元ブラックホール解を周回する物体の運動を解析し、粒子の安定軌道は存在しないがストリングは安定に束縛されうることを示した。白水は、超弦理論的なブラックホールは回転がなければ高階テンソル場のヘアが存在しないことを示した。早田は、インフラトンとベクトル場の結合があると非等方的インフレーションが起こることを示した。高橋は、運動項のインフラトン場依存性を考え、新しいカオティック・インフレーションモデルを提唱した。千葉は、Qボールからの放出重力波の評価や新しいタイプのQボールの存在を明らかにした。辻川は,ガリレオン重力理論における暗黒エネルギー模型の構築と観測的な制限を詳しく調べた。松原は、重力的な非線形構造形成による観測量を理論的に予言する枠組みを定式化した。向山は、インフレーション中の軽い場の効果や宇宙論的非線形摂動の解析などを行った。山口は、ガリレオン項を含んだ新しいインフレーションモデルを提唱した。山本は、銀河分布の多重極パワースペクトル解析におけるウィンドウ効果の解決法を開発した。 以上の成果を踏まえて、3月に海外からも多数の研究者を招へいして国際モレキュール型研究集会「Cosmological Perturbation and CMB」を開き、現状の総括と今後の方針に関する議論を行った。
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