研究課題/領域番号 |
21244033
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 節 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (70162386)
|
研究分担者 |
田中 貴浩 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (40281117)
|
研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
|
キーワード | インフレーション宇宙 / 宇宙論的非ガウス揺らぎ / 曲率揺らぎ / 修正重力理論 |
研究概要 |
今年度は、インフレーション宇宙からの曲率揺らぎの非線形効果に関して大きな成果を得た。佐々木は、複数スカラー場の一つが重たい場合の有効理論を第一原理計算によって検証し、有効理論で無視されていた新たな相互作用項の重要性を指摘した。また、重力と非極小相互作用する複数のスカラー場がある場合の曲率揺らぎの共形変換依存性を明らかにし、その再加熱機構依存性の重要性を指摘した。さらに、スカラー場がひとつの場合には局所的非ガウス性は無視できるという定理の反例を与え、大きな局所的非ガウス性の生成可能性を示した。田中は、インフレーション宇宙で一般の真空で生じる赤外発散が、ユークリッド真空を選ぶと回避されることを証明した。高橋は、ヒルトップ・カーバトン模型が観測されているスペクトル指数を自然に説明することを示した。松原は、バイアスを取扱い可能な新しい宇宙論的摂動論に基づき初期非ガウス性の影響を調べ、これまでの近似法に比べて、より精度のよい予言を可能にした。 また、拡張された重力理論においてもいくつもの成果を得た。向山は、非線形有質量重力において一様等方解に新しい非線形不安定を発見し、その帰結として新たな加速膨張宇宙解を構成した。千葉は、超新星やバリオン音響振動の最新の観測データを用いて、幅広いクラスのスカラー場ダークエネルギー模型に対する観測的制限を得た。早田は、加速膨張宇宙を説明する有力候補の二重計量重力理論がインフレーション宇宙と矛盾しないことを明らかにした。白水は、漸近的平坦な任意の高次元時空の角運動量を調べ, 遠方でポアンカレ代数が成立することを証明した。山本は、一般化されたスカラーテンソル理論の予言と宇宙論的観測との整合性を調べ、理論模型に対する制限を得た。辻川は、最も一般的なスカラーテンソル理論に基づくインフレーション宇宙で生成される曲率揺らぎの非ガウス性とその形状を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的で軸となる2つのテーマとして挙げた(1)インフレーションモデルにおける非線形ゆらぎの生成、と(2)拡張された重力理論からの観測可能量に対する予言、の2つに関して、今後の研究の土台となる知見がいくつも得られつつあるため。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、研究代表者、研究分担者、連携研究者それぞれが個々に素晴らしい成果をあげつつあるので、当面はこのままそれぞれで研究を進める。しかし、H25年度は本研究計画の最終年度でもあるので、年度の後半にそれぞれの成果を持ち寄って、成果を整理し、観測的現状に照らし合わせて、今後の理論的宇宙論研究の土台となし、今後の研究の方向性に関しての共通認識を育てる予定である。
|