研究課題/領域番号 |
21244036
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
林 青司 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80201870)
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研究分担者 |
波場 直之 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00293803)
川村 嘉春 信州大学, 理学部, 教授 (10224859)
曹 基哲 お茶の水女子大学, その他部局等, 教授 (10323859)
稲見 武夫 中央大学, 理工学部, 教授 (20012487)
細谷 裕 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50324744)
坂井 典佑 東京女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80108448)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Gauge- Higgs Unification / 標準模型を超える物理 / 余剰次元の物理 / ヒッグスの物理 |
研究概要 |
2012年7月にLHC実験でヒッグスと思われる粒子が発見され、素粒子の標準模型は最終的に確立したと言って良さそうであるが、一方標準模型には階層性問題等の問題が残り、これを超える理論の構築が素粒子理論の最重要課題の一つである。代表者は1998年に、こうした理論の候補として、Higgs を高次元ゲージ場の余剰次元成分と見なす“Gauge-Higgs Unification (GHU)”理論を提唱した。この理論ではヒッグスは元々ゲージ粒子なので、ゲージ対称性の帰結として(量子レベルの)階層性問題が解決されるといった魅力的な側面がある。この科研費による研究の目的は、こうした高次元理論の予言、及びそうした予言のLHC実験等での検証に関して論じることである。 当該年度の研究代表者の研究は主としてGHU 理論に関するものであった。まず、GHU理論の真に特徴的な予言として、ヒッグスのフェルミオンとの相互作用における“異常な”(標準模型の予言とは異なる)相互作用に関して詳しく分析し、その起源が余剰次元方向の並進対称性の破れにあることを見出した。その成果はアメリカの国際雑誌に掲載された。更に、最新のLHC実験の成果を踏まえ、ヒッグス探索で重要なヒッグスの2個の光子への崩壊過程に関して、GHU理論特有の予言について論じた。この成果も近く論文として発表予定である。 また各分担者も、126GeVのヒッグス粒子を実現するSO(5)xU(1) GHU理論の構築、高次元理論のLHC実験や宇宙論的な検証、余剰次元方向のソリトン的な局在現象の解析、高次元的大統一理論の構築、超対称的理論のヒッグス物理への帰結、等々の非常にスペクトルの広いテーマに関して今年度も大変に活発な研究活動を行い、多くの論文を学術雑誌に発表すると共に、国際会議での研究成果に関する招待講演等も行い、順調に研究成果を上げていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった、高次元理論の予言とその検証に関して、ヨーロッパのCERN研究所でのLHC実験における、ヒッグス粒子と思しき粒子の発見といった大ニュースとも密接に関係する研究を、研究代表者、分担者共に活発に遂行出来た。例えば、代表者はGauge-Higgs Unification における異常相互作用、等の話題に関して、色々な国外、国内の学術会議、研究集会において招待を行い、成果を発表することが出来た。分担者もまた、多数の学術論文の発表、活発な国際会議等での講演といった研究活動を展開した。研究代表者の論文発表に関しては、もう2編ほど予定されているものがあるが、これは、最終的な詰めに多少時間を要することから次年度に持ち越しとなった。 こうした事から、当該年度の当初の研究目的の達成度はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者、分担者の研究は、現在まで当初の研究目的に合致した形で順調に進んでおり、引き続き、こうしたアクティビティーを維持して行きたい。理論物理学においては学術論文の発表が最も重きを置かれるべき研究成果であると言えるが、同時に、研究成果を国内外の国際会議等で活発に発表する事は、異なる視点の世界的研究者等との交流も可能にし大いに意義のある事であり、こうした活動にも引き続き力を入れて行きたい。 更には、当該年度より雇用したPD研究員は本来宇宙論、特にインフレーション理論の専門家であるが、研究代表者と共同研究を始めており、宇宙論は色々な観測事実が発表されて活況を呈する分野でもあり、高次元理論の宇宙論的帰結のトピックスに関しても出来れば裾野を広げて行きたいと考えている。
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