本研究では長基線ニュートリノ振動実験T2Kの電子ニュートリノ出現事象の感度向上を目指すとともに、将来のニュートリノにおけるCP非保存探索実験実現のための道筋をつけることを目的とし、(1)ニュートリノの親粒子であるパイ中間子の生成断面積の精密測定や、(2)前置ニュートリノ検出器の改良のための検出器開発を行う。 今年度は、主に小型水チェレンコフ検出器を用いた前置ニュートリノ事象の測定と、その解析を行い、ニュートリノ以外の背景事象の理解を進めた。この小型水チェレンコフ検出器は、内水槽と外水槽の2層構造になっており内水槽の水を入れた状態と抜いた状態の2つの測定から、内水槽の中で起こったニュートリノ事象を測定する事ができる。しかし、今年度のビーム事象の測定結果から、ニュートリノ以外の粒子の相互作用の割合が多い事が分かった。現在、小型水チェレンコフ検出器周辺での背景事象の収量測定等を進めて、背景事象の理解を進めている。 一方で、研究課題(1)については、T2K実験と同じ長さのターゲットからのパイ中間子等の生成分布を解析し、その結果をT2K実験のニュートリノフラックスの見積もりに用いる手法の開発を行い、この結果は学術論文にまとめた。CERN NA61実験で測定したハドロン生成断面積測定の結果を用いることで、T2K実験でのビーム起因の系統誤差は現在5%以下となっている。またT2K実験での電子ニュートリノ出現事象や、ミューニュートリノの消失事象の解析も進めて、それぞれ夏と冬の国際会議で結果を発表した
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