研究課題
本研究プロジェクトでは、半導体量子ドットにおける電子スピン状態の光書き込み、光制御、光トモグラフィ測定の実現を目的とする。本年度は提案時計画の通り、以下の成果を得た。(1)GaAs半導体量子井戸における電子スピンのコヒーレンス状態の高精度な測定研究代表者は、電子スピンのコヒーレンス状態を直接測定する手法として、従来の磁気光学カー回転測定を発展させたトモグラフィックカー回転(TKR)測定と呼ぶ新しい手法を考案している。通常のカー回転測定では、基板に垂直な方向へのみスピン射影が可能であるが、TKR測定では任意方向へのスピン射影が原理上可能である。しかしながら、現状では基板の面内方向への射影に関しては、絶対値を精度良く評価することができないという課題があった。特に横磁場方向のスピン成分を定量評価することができなかった。本年度はこの問題を解決し、電子スピンの完全なコヒーレンス測定を可能とした。(2)電子スピンの位相緩和に関する知見の取得量子ビットのメモリー時間は位相緩和時間で決まるが、この位相緩和には様々な物理機構が関与する。従来は電子スピンの位相を直接測定する手法がなかったため、位相緩和機構について部分的な情報しか得られなかった。本年度は、TKR測定を利用し位相緩和に関する新たな知見を得た。特に、電子スピンの初期状態に依存した位相緩和を調べた結果、全方位で全く等価な位相緩和を観測した。従来測定不可能であった磁場方向の緩和も、予想した縦緩和ではなく横緩和に支配されることが判明し、スピンダイナミクスの機構解明に向け、重要な知見を得た。(3)顕微磁気光学測定系の構築量子ドットにおける電子スピン状態のトモグラフィ測定と任意光制御を行うため、顕微磁気光学測定系の構築を本年度行った。本顕微鏡を用いることにより、局所的なスピン状態の観測を行うことができ、スピンの量子性を利用することができる。
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