研究課題
本研究プロジェクトでは、半導体量子ドットにおける電子スピン状態の光書き込み、光制御、光トモグラフィ測定の実現を目的とする。本年度は提案時計画の通り、以下の成果を得た。量子ドットにおけるスピン状態トモグラフィ初年度に行った量子井戸におけるトモグラフィックカー回転(TKR)測定を発展させ、量子ドットにおけるTKR測定を行う実験系を構築し、その目処を立てた。この際、軽い正孔を仲介とするV型遷移の利用が鍵となる。量子ドットの電子状態は十分離散化しており、パウリ排他律によってシングレット(一重項状態)のみが許容されるため、量子井戸の場合より厳密なトモグラフィ測定が可能である。実験では、共振器中に埋め込まれた単一量子ドットを光励起し、単一量子ドットからの発光スペクトルの磁場依存性を調べた。その結果、通常の中性励起子だけでなく、電子を一つを過剰に持つ荷電励起子の存在を確認した。これに磁場を印加すると、発光スペクトルは4本に分裂し、電子と正孔のゼーマン分裂幅の違いを反映した不均等なスペクトル分裂を観測した。この分裂から、電子と正孔のg因子が大きくことなることとを明らかにし、上述のV型遷移の利用が可能であるとの結論を得た。この量子井戸はQ値が200程度の共振器中に埋め込まれたものであり、目的とする単一量子ドットのTKRを観測するのに十分な構造となっている。本実験により、始めて電子スピンの量子的なコヒーレンスを調べることができると期待される。入射光の偏光状態を様々に変化させ、TKR測定を通して電子スピンの状態密度行列を測定することにより、単一スピンの状態トモグラフィのみならず、状態転写に関わるチャンネルトモグラフィも行うことができる。
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