研究課題/領域番号 |
21244045
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
塚田 捷 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (90011650)
|
研究分担者 |
赤木 和人 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 准教授 (50313119)
濱田 幾太郎 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (80419465)
田村 宏之 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (60390655)
|
キーワード | ナノ空間 / 固液界面 / 計算機シミュレーション / 溶液物性 / 電気化学的過程 |
研究概要 |
1.電解質イオンを含む溶液系の取り扱いに本格的に着手した。水和した電解質イオン間の相互作用の正確な記述は溶液構造の再現に本質的に重要であるが、生体分子系のシミュレーションなどで広く使われている古典力場であっても正負イオン間でのイオン対生成の傾向が極めて強く出てしまうなど電解質溶液の記述に不自然な点があるため、第一原理計算によるバルク系および固液界面系でのリファレンス計算を行った。その過程で、バルク水でも1.5nm以上のサイズ・100ps以上の緩和時間が必要であること、微視的な固液界面領域は典型的に0.5nm程度の厚みを持つこと、各種計算モデルにおける水素結合の強さの記述と水素結合ネットワークの実効的な温度との対応付けなど、「現実的な」溶液を記述する上で重要となる種々の用件が明らかになってきた。 2.水/白金(111)電極界面における水素発生反応について、反応における界面水と電極電位の役割に注目して素過程を調べた。プロトン吸着過程の反応障壁は比較的小さいことは昨年度までに分かっているため、電極表面に吸着済みのプロトン同士の会合脱離(Tafel過程)、および吸着済みのプロトンと溶液中のプロトンとの会合脱離(Heyrovsky過程)の競合に焦点をあてた。自由エネルギー空間における反応障壁をBlue-moon ensemble法により計算したところ、無バイアスの場合はTafel過程が優位であるが、電極電位が負になるに従ってHeyrovsky過程が優位となることが分かった。 3.光誘起電荷分離の取り扱いに関しては、開発を続けてきた非断熱カップリングの解析法にLong-range corrected time-dependent density functional theory(LC-TDDFT)計算を組み合わせることで、さらに定量性を向上させることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
信頼できる電解質溶液系の記述に必要な要件の発見に手間取り電気二重層構造の解明や電極のナノ構造の影響の評価の着手が遅れたこと、昨年度は震災の影響で使用できる計算機資源が例年よりも少なくなってしまったことが挙げられる。
|
今後の研究の推進方策 |
H24年度開始時点で、電解質溶液の記述で留意すべき点はかなりクリアになっている。その一方、電極界面近傍において、電解質イオンよりも水分子の方が電場の遮蔽に寄与しているように見える計算結果も得られている。研究計画の変更は考えないが、電極形状の影響の評価を後回しにして平板電極系に限ってでも、電気二重層の構造と役割について当初計画でのイメージにとらわれずに深く掘り下げた議論を行うことが必須であると考える。
|