研究課題/領域番号 |
21244046
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大岩 顕 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (10321902)
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研究分担者 |
樽茶 清悟 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (40302799)
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キーワード | 半導体 / メゾスコピック系・局在 / 量子情報技術 / 量子ドット / 光子-スピン量子インターフェース / 回路量子電気力学 |
研究概要 |
(1)量子ドット中の偏光選択励起による光子偏光-スピン量子状態転写 (1)単一円偏光光子生成する単一電子スピンの方向検出 単一量子ドットの2電子領域におけるスピン1重項と3重項状態のトンネル時間差を利用し、単一円偏光光子が生成する単一電子スピン検出を試みた。スピン検出と矛盾しない結果が得たが、次年度以降、さらなる確認の実験を行う。 (2)二重量子ドットにおける単一光子生成単一電子スピン検出 スピンブロッケードを利用した角運動量転写の実証を進めた。特に昨年度、通常のGaAs系HEMT基板上の二重量子ドットで得られたデータの解析と検討を進めた結果、スピン依存トンネルによって、円偏光単一光子が生成する単一電子スピンが検出でき、角運動量転写を達成できたとの結論に至った(論文準備中)。 (3)コヒーレント転写用量子井戸素子の開発 光子偏光-スピン量子状態転写には量子井戸2次元電子系に量子ドットを作製することが必要である。そこで昨年度g因子を評価したコヒーレント転写用基板を使って二重量子ドットの作製を行い、やはり昨年実現したドット間トンネルによる単一光子検出法を利用し、コヒーレント転写量子ドットにおいて単一光子検出に成功した。これはコヒーレント転写実現に向け大きな前進である。 (2)超伝導共振器中の光子状態-電子スピン結合の物理と応用 今年度は、InAsドットに加えInSbナノワイヤーも取り入れて、試料構造の大きな改善を図り、共振器の透過測定と同時に量子ドット電流も測定できるようにし、両者に静電的な結合があることを見出した。しかし電子スピンとの結合を示す信号は得られていないので、スピン軌道相互作用による結合のほかに、研究分担者がスピン量子ビットの開発に用いている微小磁石を応用して、共振器-電子スピン結合系の実現を目指す。 [連携研究者]東京大学 生産技術研究所 教授 平川一彦 InAsドット試料の作製
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子ドット中の偏光選択励起による光子偏光-スピン量子状態転写に関しては、これまで、単一光子から単一電子スピンへの角運動量転写と、コヒーレント転写用量子ドットの開発という中心課題をほぼ当初計画どおり遂行し、成果を挙げている。超伝導共振器中の光子状態-電子スピン結合の物理と応用については、試料の作成を昨年度大幅に改良したため、当初計画よりも遅れが認められるが、すでに共振器とドット系の静電的結合を確認しつつあるので、大幅な遅れはない。
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今後の研究の推進方策 |
量子ドット中の偏光選択励起による光子偏光-スピン量子状態転写に関しては、当初研究計画どおり、コヒーレント転写実験へ進めてゆく。予想される問題点としては、1)単一光生成電子を捕捉する効率が低いことや、2)高周波印加による量子ドット中の単一電子スピン操作を組み合わせて行うスピントモグラフィー測定が技術的に困難であることが予想される。1)については昨年度からすでに、2次元量子井戸を含む分布ブラッグ反射型共振器構造の導入を検討している。2)については、完全なスピンとモグラフィー前に、光生成単一電子スピンを高周波パルス印加によって回転操作可能であることを示す実験を行い、スピントモグラフィーへ向け段階的に成果を挙げる。
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